PFD試験|消化器系の検査

『看護に生かす検査マニュアル』より転載。
今回は、PFD試験について解説します。

 

高木 康
昭和大学医学部教授

 

〈目次〉

 

PFD試験とはどんな検査か

PFD試験とは膵外分泌酵素(α- キモトリプシン)によって特異的に分解される合成基質BT−PABA(ベンチロミド)を経口投与し、その分解産物(パラアミノ安息香酸)の尿中への排泄量を測定することで、膵外分泌機能を調べる検査である。

 

図1尿中PABA排泄率

 

PFD試験の目的

膵外分泌(消化酵素)機能を検査することで、膵臓の病態解明に役立つ。高値側での臨床的意義は少ないが、膵癌や中等度以上の慢性膵炎では低値を示す。そのため、慢性膵炎診断基準として用いられている。また、膵癌や消化管手術後の消化障害などの診断、経過観察を行うことができる。

 

PFD試験の実際

PFD試薬内服前に対照尿を採取し、6時間蓄尿したあと、蓄尿量を測定し、サンプル尿を採取する。

 

図2PFD検査の実際

PFD検査の実際

 

  1. 早朝空腹時に排尿させ、一部採取する。
  2. 排尿後PFDアンプルを200mLの水とともに服用させる。
  3. 1時間後、利尿のため200mLの水を飲ませる。
  4. 開始後3時間以上経過すれば、食事摂取可能である。
  5. 検査開始後6時間までの尿はすべて蓄尿させ、尿量を測定し一部採取する。

 

PFD試験前後の看護の手順

1)患者への説明

  • 膵臓の消化酵素の機能を調べる検査で、尿中の成分から検査を行うので、肉体的な負担は少ない。
  • 消化酵素薬・利胆薬は検査値に影響を与えるため、2日前から内服しないようにしてもらう。
  • 検査開始時に必ず排尿する。
  • 早朝空腹時に排尿し、試薬の入った水を飲む。1時間後にもう一度水を飲み、蓄尿する。
  • 食事は3時間後から摂取可。
  • アルコールに過敏で、PFD試薬服用後、気分不快などがあれば伝えるよう説明する。

2)検査前の処置

  • 消化酵素薬・利胆薬などは検査値に影響を与えるため、検査2日前より休薬する。

3)準備するもの

  1. PFD試薬1本
  2. 採尿用カップ1個
  3. 蓄尿かめ
  4. 採尿カップ
  5. 検体用スピッツ2本

4)検査後の管理

  • 特になし。

 

PFD試験において注意すべきこと

1)検査前

  • 尿中排泄量を測定するため、腎機能が低下している場合(血清クレアチニン量2mg/dL以上)には、正しい成績が得られない。
  • 急性膵炎・急性肝炎急性期および妊婦には実施しない。
  • アルコールの過敏症の有無を確認しておく。

2)検査中

  • 試薬の中には少量のアルコールが含まれているため、アルコールに過敏な人は動悸顔面紅潮を起こすことがある。
  • 蓄尿場所をオリエンテーションする。
  • 尿量も検査の対象となるため、全量蓄尿する。
  • きちんと蓄尿されているか確認する。

3)検査後

  • 検査後すぐに検体を検査できない場合は冷蔵庫で保管する。尿中PABAは冷蔵庫内では2〜3週間安定である。
  • 検査終了時より、飲食は可能である。

 

PFD試験現場での患者との問答例

明日は、膵臓の消化酵素を調べる検査をします。

 

おなかの中を見るのですか。

 

いいえ、尿をとって調べます。

 

どのようなことをするのですか。

 

薬の入った水を飲んでいただき、6時間尿をためて検査をします。この水は検査薬のため、少し苦味があります。
なるべく時間をかけずに飲んでください。7時にもう一度水を飲みます。これは、普通の水です。利尿をつける目的のため、このあとトイレに行きたくなるかもしれません。

 

はい。

 

6時間の尿をすべてためないと正確な結果が出ませんので、必ず全量ためてください。

 

わかりました。

 

PFD試験に関する患者への説明用資料

説明用資料PFD検査を受ける患者様へ

この検査は、尿を採取し膵臓の消化酵素を調べる検査です。

 

〈当日〉

 

  • 6時に排尿し、尿を採尿カップにとってください。
    排尿後、試薬の入った水200mLをお持ちしますのでお飲みください。
    これから12時まで、甕に尿をためていただきます。量も検査しますので、全量こぼさずためてください。
  • 7時にもう一度水200mLをお持ちします。時間をかけずにお飲みください。その後飲水は自由です。
  • 9時になったら、朝食をおとりください。
  • 12時になったら、尿意がなくてももう一度排尿してください。

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 看護に生かす検査マニュアル 第2版』 (編著)高木康/2015年3月刊行/ サイオ出版

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