ICUにおける心臓血管外科術後患者の受け入れ準備
『ICU看護実践マニュアル』(サイオ出版)より転載。
今回は、「ICUにおける心臓血管外科術後患者の受け入れ準備」について解説します。
木村満美子
市立青梅総合医療センター 看護師
黒木秀仁
市立青梅総合医療センター 看護師
術後患者の受け入れの必要物品
ベッドサイドに準備する物品
- 術衣
- 酸素ボンベ
- 酸素流量計
- ジャクソンリース
- 加圧バッグ
- ACT用のテストチューブ
- ACT測定器
- 採血スピッツ
- 血液ガスキット
- 単包アルコール綿
- 三方活栓
- 保護栓
- 抑制帯
- 酸素マスク・カヌラ
- 胃管を接続する閉鎖式ドレーンバッグ
- 薬剤に使用するシリンジ(50mL、20mL、10mL、5mL、2.5mLを必要本数準備する)
- ルート類などの延長チューブ(100cm、75cm)
- 点滴セット
- 不織布ガーゼ
- 水準計
- 下肢用枕2個
- 点滴準備用トレイ
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固定用物品
- 胃管固定テープ
- 気管チューブ固定用物品(バイトブロック、固定用テープ)
- スワン-ガンツカテーテル固定物品(単包ポビドンヨード消毒液、滅菌ドレッシングフィルム材、1枚ガーゼ、10×2.5cm幅の伸縮性固定テープ)
- 無滅菌ドレッシングフィルム材
- 観血的動脈圧測定刺入部固定用の固定シーネ
- 点滴固定用ドレッシング材
- 伸縮性包帯
- サージカルテープ
薬品
- ニカルジピン塩酸塩10mg×2A
- メイロン(炭酸水素ナトリウム)7%20mL×2A
- プロポフォール200mg/20mL×2A
- ケイツーN(メナテトレノン注射液)×2A
- アルブミン5%輸血100mL×2本
- プロタミン塩酸塩1V
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その他
- 低圧持続吸引器
- 搬送用ベッドサイドモニター
- 輸液ポンプ1台
- 電気毛布
- 天井走行ガートルハンガー
- 点滴架台
- 延長コード(2本)
- 12誘導心電計(あらかじめ胸部誘導・四肢誘導電極をつけておく)
器械・カセットケーブル類
- ドレーン鉗子(2本)
- ペアン(2本)
- 定規
- 膀胱温・皮膚温ケーブル
- 圧トランスデューサーホルダー
- 圧トランスデューサーをセッティングする架台
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受け入れ準備の実際
輸液・検体検査の準備
術後採血・血液ガス検査などを確認し、採血スピッツ・血液ガスシリンジを準備する。
申し送り
担当看護師は、患者出棟病棟から申し送りを受け、手術に必要な物品を受け取る。
帰室時の採血スピッツ、ベッドネーム、内服薬、手術準備物品を受け取る。
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術後の受け入れベッド作成とベッドサイドの準備
手順
1ベッドの種類はできるだけ、エアマットを選択する。維持透析施行中の患者は、体重測定計測可能なベッドの使用を考慮する。ベッドの高さをいちばん高くし、頭側のヘッドボードを取り外しておく。
2バスタオル2枚、下肢用枕2個、術衣、バストバンド、紙おむつを準備する(図1)。
図1ベッドの準備
3バスタオル2枚のうち1つは、バスタオルを三つ折りにし、1枚は頭部用として、ブルーシーツで包む。もう1枚はベッドの上に敷き、その上に術衣は肩の部分を外した状態にして広げ、バストバンド、紙おむつを設置する(図2)。下肢用枕2個はベッドの下側に準備しておく。
図2バストバンド、紙おむつの設置
4その上からタオルケット、電気毛布、毛布の順に重ね、電気毛布のスイッチを入れて保温しておく(図3)。
図3毛布の設置
5ベッドの頭部左側に閉鎖式ドレーンバッグ(胃管接続用)をクレンメを閉じた状態にしてつるす(図4)。ベッド足側スタンド立て用の穴にドレーン鉗子2本を立てておく(図5)。
図4ドレーンバッグの設置
図5ドレーン鉗子の準備
6天井からつるす点滴棒(天井走行ガートルハンガー)を2本用意する(図6)。
図6点滴棒の準備
7心電計を準備する。胸部誘導・四肢誘導の電極をまとめて設置しておく。電極は、皮膚に直接貼付できるように全面ゲルリード付きのものを使用する(図7)。
図7心電計の準備
8延長コードを最低2本準備し、ベッドの左右側に1本ずつ設置しておく。
9末梢点滴用の輸液ポンプを1台準備する。
10ベッドサイドモニターのカセットに膀胱温・皮膚温ケーブルを接続する(図8)。
11圧トランスデューサーをセッティングする架台を点滴棒にセッティングする(図9)。
図8ベッドサイドモニターの準備
図9点滴棒へのセッティング
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抜管の必要物品の準備
- 不織布ガーゼ
- ビニール袋
- カフエア抜き用シリンジ10mL
- 酸素マスク
- カヌラ
これらをビニール袋に入れてひとまとめにし、ベッドサイドにおいておく。
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薬剤の準備
- 1ニカルジピン塩酸塩10mg/10mL2A
- 2メイロン(炭酸水素ナトリウム)7%20mL2A
- 3プロポフォール200mg/20mL 2A
- 4ケイツーN(メナテトレノン注射液)2A
- 55%アルブミン輸血2本
- 6プロタミン塩酸塩1V
1~6の薬剤を点滴トレイに置き、使いやすいようにテーブルの上に並べておく(図10)。
図10薬剤の準備
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必要物品の準備
シリンジ(2.5mL、5mL、10mL、20mL、50mL)を適量準備する。
アルコール綿、保護栓、18G注射針、通気針、輸液ポンプルート、輸血点滴ルート、100cm延長チューブを適量準備する(図10)。
図11必要物品の準備
観血的動脈圧測定時の刺入部固定物品(シーネ、固定テープ、不織布ガーゼ、包帯)、気管チューブ固定物品(バイトブロック、固定テープ)、胃管固定用テープ、中心静脈カテーテル固定物品(凹型固定テープ・2.5cm幅固定テープ・単包のポビドンヨード消毒2本・滅菌ドレッシングフィルム材、滅菌ガーゼ)、膀胱留置カテーテル固定テープ、皮膚温固定用の無滅菌ドレッシングフィルム材、サージカルテープを準備する(図12)。
図12各種固定用物品
スピッツ立てにACTテストチューブを適量と、採血スピッツを準備する。
ACT測定器をテーブルの上に準備する。帰室時の採血は、血液ガス、ACTテストチューブはまとめて点滴トレイに準備しておく(図13、14、15参照)。
図13各種検査用物品 1
図14各種検査用物品 2
図15各種検査用物品 3
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手術室持参物品の準備
ワゴンに酸素ボンベ、ジャクソンリース、手動式バッグ、加圧器、低圧持続吸引器、搬送用ベッドサイドモニターを準備する。
※通常、留置されるドレーンは2本(心嚢、胸骨下)であるが、人工血管置換術の場合には、人工血管裏にドレーンが留置されるため、低圧持続吸引器が2台必要になる。
心電図モニター電極、酸素飽和度測定のモニターケーブルを接続しておく(図16)。
時間を見計らい物品を手術室に持参する。低圧持続吸引器は直前まで充電しておく(図17)。
図16電極、ケーブルの準備
図17手術用持参物品の準備
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術中患者の人工呼吸器設定
手術室持参物品を持参したら、手術室より臨床工学技士または、手術室の看護師から、術中患者の人工呼吸器設定表を受け取り、患者が帰室するまでに設定用紙に従い人工呼吸器設定をしておく(図18)。
図18人工呼吸器の設定
書類の準備
必要書類は、準備できたら使いやすいように整理しておく。
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点滴の準備
帰室時の点滴を指示簿に従い作成する。
当院での術後の輸液は5%ブドウ糖500mL+パンテノール(パントテン酸製剤)500mgとなっている。ルートは、輸液ポンプライン1本+三方活栓4個+75mLの延長チューブ1本+三方活栓1個で準備する(図19)。
図19点滴セットの準備
末梢ライン用の輸液はソルアセトF(酢酸リンゲル液)500mLを基本としている。
慢性腎臓病患者の場合は、輸液内容に変更がないか帰室時に医師に確認する。
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手術室からの連絡
終刀の連絡が来たら、電気毛布や布団をはずし術衣やバストバンドの位置を整える。
ベッドを準備する際には、電源コード・ヘッドボードを外して、再度、ベッドがいちばん高い状態でセッティングされているかどうかを確認する。ベッドを斜めにする(図20)。
図20受け入れ準備完了のベッド
患者が医師、臨床工学技士とともにストレッチャーにて帰室したら看護師スタッフを集め、患者の身体をベッドに移動させる。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『ICU看護実践マニュアル』 監修/肥留川賢一 編著/剱持 雄二 サイオ出版