「不整脈非薬物治療ガイドライン」が7年ぶりに改訂|心房細動へのアブレーション、第一選択も可能に

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高志昌宏=シニアエディター

 

「不整脈非薬物治療ガイドライン」が7年ぶりに改訂された。

 

新しいガイドライン(2018年改訂版)では、再発を繰り返す症候性の心房細動(AF)に対する第一選択としてのカテーテルアブレーションを許容したほか、多くの新しい植え込み型心臓電気デイバスについて言及した。

 

3月29~31日に横浜市で開催された第83回日本循環器学会学術集会(JCS2019)で、ガイドライン研究班の班長を務めた近畿大学心臓血管センターの栗田隆志氏と筑波大学循環器不整脈学講座の野上昭彦氏が解説した。

 

 

カテーテルアブレーションは年間7万件以上も行われており、その過半数がAFへの施行という。

 

2018年改訂版では、AFのリスクに対する内科的治療の重要性を強調。甲状腺機能亢進症、肥満、睡眠時無呼吸症候群高血圧糖尿病脂質異常症、アルコール多飲、喫煙といったAFのリスク要因がある場合は、まずそれらへの介入を十分に行うべきとした。

 

さらにアブレーション施行の判断に当たっては、年齢(高齢者より若年者が好ましい、以下同様)、症状の有無と程度(無症候性よりは症候性)、AFの進行度(持続性よりは発作性)の3因子について、それぞれ個別に考慮するのではなく、患者ごとに総合的に評価することを求めた。

 

その上で、症候性で再発を繰り返す発作性AFの場合、抗不整脈薬による治療を試みる前に第一選択としてアブレーションを施行することを、クラスIIa(有効である可能性が高い)で許容した。

 

従来、アブレーションは薬物治療が無効または副作用で継続できない場合とされていた。

 

 

「薬物治療とアブレーションのどちらも第一選択の扱いになったことが、2018年改訂版の大きな変更点の1つ」と野上氏。

 

持続性および長期持続性AFでも、十分なエビデンスはないものの薬物治療の効果は不十分であることから、症候性で再発を繰り返す場合は第一選択としてのアブレーションを妥当とした。

 

具体的には持続性AFはクラスIIaで、長期持続性AFはクラスIIb(有効性はそれほど確立していない)で推奨した。

 

また、アブレーション周術期の抗凝固療法について、中和薬があるワルファリンまたはダビガトランを投与されている患者では、休薬なしでのAFアブレーションがクラスI(有効性が証明されている)で推奨された。

 

それ以外の非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC、ガイドライン内では直接作用型経口抗凝固薬=DOACを使用)は、クラスIIaの推奨だ。また、NOAC投与患者では、実臨床で普及しているAFアブレーション前の1~2回の休薬もクラスIIaで推奨された。

 

 

ICDやCRTでは介入試験の結果の解釈で議論

一方、植え込み型心臓電気デバイスの領域では、まず植え込み型除細動器(ICD)の一次予防目的(心室頻拍/心室細動の既往がない症例への植え込み)での推奨が紹介された。

 

対象となる基礎心疾患は、虚血性の冠動脈疾患と拡張型心筋症などの非虚血性心筋症に大別される。

 

冠動脈疾患に対しては、2011年以降に注目される大規模な介入試験がなく、我が国のレジストリー研究CHART-2のエビデンスなどを加味して、これまでとほぼ同じ推奨となった。

 

非虚血性心筋症に対しては、結果発表が待たれていたDANISH試験(2016年)が総死亡の有意なリスク減少を示すことができず、推奨の扱いが議論となった。

 

これについては、DANISHを加えたメタアナリシスで有意な総死亡のリスク減少が示されたほか、NIPPON STORMから非虚血性心筋症の一次予防患者でもICDの適切作動が一定の割合で発生していることが報告された。さらにCHART-2のデータも踏まえ、非持続性心室頻拍(NSVT)があればクラスI、なければクラスIIaという従来の推奨が踏襲された。

 

栗田氏は「虚血性、非虚血性ともに推奨のクラスは前回のガイドラインと変わらないが、我が国のエビデンスによって裏付けがなされ、より自信を持って推奨できるようになった」と話す。

 

心臓再同期療法(CRT)の適応下限となる心電図のQRS幅も「侃々諤々の議論となった」(栗田氏)という。

 

心エコー図で同期不全を認め、かつQRS幅が130ms未満の患者を対象としたランダム化比較試験EchoCRT(2013年)において、総死亡がCRT群で上昇傾向にあったためだ。

 

これを受け欧州心臓病学会のガイドラインでは、130ms未満は禁忌(クラスIII)とした。一方、我が国のガイドラインの下限値は120msであり、小柄な女性などではQRS幅が120~130msであっても有効例が報告されている。

 

本件については、班会議の直前に発表されたEchoCRT試験のサブ解析により、左室拡張末期容量が小さければCRTが少なくとも有害ではないことが示された。この知見も鑑みて今回の改訂でもQRS幅の下限については、130ms以上においてより強固なエビデンスがあるとしながらも、従来と同様の120msとなった。

 

これ以外に2018年改訂版では、リードレスペースメーカーや皮下植え込み型除細動器、経皮的リード抜去、着用型心臓除細動器、左心閉鎖デバイスなど、2011年以降に実臨床への導入が始まった多様なデバイスについて言及。

 

さらに「非薬物治療後の就学・就労」について独立した章を新設し、デバイスを植え込んだ小児患者の学校生活での注意点、ICD植え込み成人患者の自動車の運転に関するステートメントなども収載した。

 

ガイドラインは日本循環器学会のウェブサイトで公開されている(こちら

 

<掲載元>

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