2018年度診療報酬改定【総まとめ】看護師への影響ポイント解説
2018年度の診療報酬改定は、6年に1回の「介護報酬とのダブル改定(同時改定)」でした。医療・介護の提供体制を見直さなくてはならない「2025年問題」を控えて、ここが大きな転換点になるとも言われています。
そんな2018改定では、看護師の働き方を左右しそうな変更がいくつかあり、今後じわじわと影響が現れてくるとみられます。改定の全体像を眺めながら、特に看護師にかかわりの深いポイントを解説します。
【もくじ】
地域包括ケアシステム構築の動きが加速する
2018年度の診療報酬改定でもキーワードとなったのは、やはり
「地域包括ケアシステムの構築」と
「医療機能の分化・強化」。
「病院完結型」を脱して、医療機関と在宅ケア・介護サービスが連携した「地域完結型」を目指す動きは、この改定を経てますます加速していきます。
入院医療の大再編!看護師のキャリアにも変化…?
2018改定の目玉となったのは、入院医療の再編です。
病院に支払われる入院料は、
看護配置など施設基準に応じた「基本部分」
と、
入院患者の重症度や医療機能に応じた「実績部分」
の組み合わせに変更されました。
「どんな体制を整えているか(=看護配置)」だけでなく、
「どんな患者をどのくらい受け入れ、どんな医療を提供しているか(=医療機能)」
で評価しようとする流れは、ここ数回の改定で整えられてきましたが、今回いよいよ報酬体系そのものの見直しに行き着いたと言えます。
併せて、入院医療の枠組みも整理されます。
中でも注目なのが、7対1と10対1の一般病棟を統合した「急性期一般入院基本料」。
これによって、7対1病棟の削減が誘導されています。
それはつまり、看護師にとって最もメジャーな勤務先が減るということ。
今後、急性期病院で看護師の採用控えが起きる可能性が指摘されています。
また、急性期の医療機能を評価するのに欠かせない「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)は、今回も見直しになっています。
認知症患者への対応が評価される一方、重症患者の割合に関する基準はやや引き上げられました。病院によっては「7対1を維持するか否か」の判断を迫られそうです。
このほか、地域包括ケア病棟では「在宅からの患者の受け入れ実績が多い中小病院」に高い点数が付いたり、回復期リハビリテーション病棟では「リハビリの実績(アウトカム)が良い病棟」がさらに評価されたりと、地域包括ケアシステムの構築へ、不足している機能を充実させる意図が読み取れる改定内容になっています。
療養病棟は原則として20対1に一本化(25対1は2年間の経過措置として残る)。医療の必要性が高い患者のベッドという色合いを濃くし、介護療養病床の廃止に伴って新設される介護医療院や、ほかの介護施設とのすみ分けが強調されました。
入院の長期化リスクは徹底して小さく
入院期間を短縮し、スムーズな在宅移行を進める施策はさまざまに展開されています。
その一つが退院支援。
これまでは「入院直後からの支援」でしたが、2018改定で「入院する前、外来からの支援」というコンセプトが打ち出されました。
呼び方も「入退院支援」と改められ、診療報酬の評価も手厚くなっています。退院支援・退院調整能力は、これからの病院ナースにとって要注目のスキルです。
褥瘡対策も看護師にかかわりの深い項目ですね。
2018改定では、「スキンテア」と「医療関連機器圧迫創傷(MDRPU)」が新たに評価に組み込まれたほか、褥瘡対策の結果(アウトカム)を出すことがより重視されています。
高齢患者が増えていく中、「入院中の新たな褥瘡の発生はとことん防ぐ!」という方針はこれからも強まっていきそうです。
看護師争奪戦、戦いの場は訪問看護へ!?
病院の入院医療、特に急性期の入院ベッド縮小に向かって仕組みが見直される一方で、拡大路線を進んでいるのが在宅診療・訪問看護です。
訪問看護に対する診療報酬の評価は改定のたびに手厚くなっていて、民間企業を中心に、訪問看護ステーション事業への参入が増えています。
さらに2018改定では、24時間体制で対応したり、病院看護師との人材交流を受け入れたりといった高い機能を持つ訪問看護ステーションを評価。こうした機能を担いやすい病院の訪問看護事業への参入を促します。
急性期病棟を中心に繰り広げられてきた“看護師争奪戦”が、その主戦場を訪問看護へと移す日も来るかもしれません。
>>訪問看護師10年で倍増!追い風が吹く訪問看護、採用ニーズさらに拡大へ
ACPで看取りが変わる
地域包括ケアシステムの構築などと並び、「国民の希望に応じた看取りの推進」も改定の基本方針に掲げられました。
その柱となるのが「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」です。
およそ11年ぶりに改訂されたこのガイドラインでは、望む看取りを実現するために、本人と家族などの親しい人、医療・介護従事者が繰り返し話し合い、方針を共有する「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」の考え方を基本としています。
このガイドラインにのっとった意思決定のプロセスが、看取り関連の診療報酬の算定要件に加わることになりました。
>>終末期ガイドライン改訂、話し合い重ねるACP(アドバンス・ケア・プランニング)が核に
看護師の負担軽減対策に加わった「身体拘束」の要件
診療報酬が改定されるたびに、求められる看護の質は上がる一方です。
そこで、夜勤ナースや看護補助者を手厚く配置する病院に対する評価が充実されました。
報酬点数が引き上げられたり、加算が新設されたりと、看護師の負担に一定の配慮がなされています。その一方で、看護補助者の手厚い配置に関する加算を算定するための要件として、「身体拘束を最小化する取り組みを行うこと」が新たに追加されました。
看護師の負担軽減策は前回の2016改定でも充実されましたが、目に見える効果は上がっていないのが実情。果たして今回はどうなるのでしょうか。
次の改定、さらにその先は?
地域包括ケアシステムの構築へ、大きな変わり目の中にある医療・介護。
2018改定も、この既定の流れに沿った内容でした。2025年まで診療報酬改定はあと3回行われますが、急に違うベクトルにかじが切られることはまずあり得ません。「地域包括ケアシステム」というゴールに向かって、さらに施策を補強するような改定が続くとみられます。
さらにその後に待ち受けるのは、人口減少によって全体の医療ニーズが縮小する「2040年問題」―。診療報酬改定をめぐる議論では、2040年を見据えた指摘が既に出ています。
看護師の日々の業務やキャリアにも影響の大きい国の医療政策の動向に注目です。
看護roo!編集部 烏美紀子(@karasumikiko)
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▷『「7対1看護」の病院が減る?|2018年度診療報酬改定』
(参考)
診療報酬改定について(厚生労働省)
平成30年度診療報酬改定の概要 医科1・PDF(厚生労働省)
厚生労働省平成30年3月30日事務連絡・疑義解釈資料の送付について(その1)(厚生労働省)
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