今回も報酬アップ、看護師の夜勤負担は軽くなる…?|ナースのための2018診療報酬・介護報酬改定【5】

診療報酬改定のたびに、看護の質に対する要求はレベルが上がっていく一方。「慢性的な人手不足は解消されていないのに、現場の負担がどんどん重くなっている」との声も聞かれます。

 

こうした中、2018年4月の診療報酬改定では、主に夜勤を中心とした看護師の負担軽減対策が盛り込まれています。対策のポイントを見ていきましょう。

 

看護師の負担軽減対策 2018改定の変更点

1)「看護職員」の夜間の配置に対する評価が充実する

2)「看護補助者」の配置に対する評価が充実する

3)「看護補助者」の配置加算の要件に「身体拘束の低減」が追加される

 

 

夜勤ナースの手厚い配置に報酬アップ

まずは、1つ目の「看護職員」の夜間配置についてです。

 

2018改定では、▽急性期の一般病棟▽地域包括ケア病棟▽療養病棟▽精神科救急入院料病棟(スーパー救急)―のそれぞれで評価が充実。夜勤ナースを手厚く配置する病院の報酬が引き上げられたり、新たに設けられたりすることになりました。

 

看護職員の夜間配置を評価する加算についての図表、急性期一般病棟の「看護職員夜間配置加算」では夜間12対1配置加算1、同2、夜間16対1配置加算1がそれぞれ15点の点数アップ、さらに夜間16対1配置加算2(30点)が新設された。地域包括ケア病棟では「看護職員夜間配置加算」(55点)が新設、療養病棟では「夜間看護加算」(35点)が新設、精神科救急入院料病棟では「看護職員夜間配置加算:(55点)が新設された

 

加算が新設された地域包括ケア病棟や療養病棟では、それぞれ「認知症患者の受け入れが多い」「自立度が低い患者の受け入れが多い」ことが算定の条件となっています。こうした特性のある病棟では、「行動の見守り・付き添い」「おむつ交換」「排泄介助」など、特に負担感の大きい業務の割合が高い点が考慮された形です。

 

 

どのくらいのインパクトがあるの?

上に挙げた加算は15点~55点の点数アップなので、金額では150円~550円の引き上げとなります。

 

これによって、病院の収入にどのくらい影響があるのでしょうか。ざっくり試算してみます。

 

入院患者数が平均50人の急性期一般病棟】

「夜間12対1配置加算」を改定前も改定後も算定する

→ (15点×10円)×50人×365日=273万7500円

1病棟当たり 年間で約273万円の増収

 

【入院患者数が平均50人の地域包括ケア病棟】

新設の「看護職員夜勤配置加算」を算定する

→(55点×10円)×50人×365日=1003万7500円

1病棟当たり 年間で約1003万円の増収

 

病床規模や受け入れている患者の状態にもよりますが、病院単位では、それなりの額になりそうです。これが人件費として活用されるのか、それぞれの病院のマネジメントが問われます。

 

 

業務分担へ、「看護補助者」の配置も報酬アップ

看護師の負担を軽減する診療報酬の視点の2つ目、「看護補助者」の配置についてです。

 

患者の世話、病室の整理、事務作業など、看護師の仕事の一部をサポートする「看護補助者・看護助手」。この看護補助者を日中あるいは夜間に手厚く配置する病院に報酬を上乗せすることで、看護師の負担を減らそうという狙いです。

 

「入院患者◯人に対して△人の看護補助者を置く」といった基準や、「勤務と勤務の間(インターバル)が11時間以上」「連続夜勤は2回まで」など一定の条件をクリアしていると算定できる加算がいくつかあり、2018改定でそれらの報酬が引き上げられます。

 

看護補助者への業務分担を評価する加算についての図表、急性期一般病棟では「急性期看護補助体制加算」の各項目がそれぞれ50点アップ、13対1~20対1の病棟では「看護補助加算」の各項目がそれぞれ10~20点アップ、障害者病棟の7対1と10対1では「看護補助加算」が新設された

 

点数がアップする加算の上げ幅は、それぞれ10点~50点。先ほどと同じく、ざっくりとした試算では、「10点アップするごとに、平均入院患者50人の1病棟当たり、年間182万5000円の増収になる」というイメージです。50点アップだと年間912万5000円の増収になります。

 

 

負担軽減で新たに求められる「身体拘束」への取り組み

一方、この看護補助者の配置加算に関しては、新たに加わった条件もあります。「身体拘束の低減」と「看護補助者への研修」です。

 

看護補助加算の新要件に関する図表、急性期看護補助体制加算と看護補助加算を算定するには1)看護師と看護補助者の業務の定期的な見直し(年1回)としんたいこうそくを最小化する取り組み、2)看護補助者への年1回の院内研修-の要件が新たに必要となる

 

身体拘束を減らす具体的な取り組みとして、現時点では、

 

▽身体拘束を実施するかどうか、職員個々の判断ではなく、医師や看護師など複数人で検討すること

▽身体拘束を実施する場合は「必要性のアセスメント」「具体的行為や実施時間の記録」などを行うこと

▽少なくとも1日1回は拘束の解除に向けた検討を行うこと

 

-などが挙げられています。

 

身体拘束を実施するかしないかは、現場の人員の充足状況が大きくかかわっています。看護師・看護補助者の人員増強につながる対策に報酬を増やす以上、国としては、ケアの質でもその成果を測りたいという意図が読み取れます。

 

 

効果は期待薄…?看護師の負担はどうなる

さて2018改定で、看護師の負担軽減には、どれほどの効果が期待できるのでしょうか?

 

今回の改定と同じように夜勤に関する報酬引き上げや、月平均夜勤時間を72時間以下とする「72時間ルール」の見直しなどが行われた前回の2016改定について、厚労省は効果検証を行っています。

 

看護師の夜勤負担について2016改定前後を比較した図表、常勤看護師の1か月平均の夜勤時間は66.5時間から66.2時間となりマイナス20分、1か月の夜勤時間が72時間以上の看護師の割合は38.9%から37.3%となりマイナス1.6ポイント

注:「加算あり」は「夜間12対1配置加算1」「夜間16対1配置加算」「夜間看護体制加算」などを算定する病棟

出典:中央社会保険医療協議会総会(第368回)横断的事項(その4)について

 

 

この検証結果を見る限り、2016改定の効果は限定的で、さほど改善は見られません

 

やはり抜本的な人手不足が解消されない限りは、「急激に夜勤の負担が軽くなった!」ということは期待できなさそうです。

 

とはいえ、医療費全体に削減圧力がかかっている中で、今回の改定でも看護師の業務負担に配慮が行われたこと自体は悪いことではありません。改定の影響が現れてくるのは今後しばらくしてからになりますが、この充実がナースの待遇改善や人員補充などにどこまで反映されるのか、次はそれぞれの病院の対応に注目が移ります。

【烏美紀子(看護roo!編集部)】

 

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▷『夜勤要件の大幅見直しで、看護師は本当に楽になるのか?|2016診療報酬改定【3】

 

(参考)

答申について・個別改定項目・PDF(厚生労働省)

平成30年度診療報酬改定の概要 医科・PDF(厚生労働省)

中央社会保険医療協議会総会(第368回)横断的事項(その4)について・PDF(厚生労働省)

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