2018年度ダブル改定で「看取り」の解釈が拡大

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二羽はるな=日経ヘルスケア

 

 

2018年度診療報酬改定の議論が大詰めを迎えている。一般病棟や療養病棟における入院基本料の再編・統合や在宅復帰率の算出方法の見直しなど、病院経営への影響が大きい改定となる見通しだが、個人的に注目しているのは「看取りにかかる評価の見直し」だ。

 

***

 

2018年度改定の基本方針では、具体的方向性の一つに「国民の希望に応じた看取りの推進」が盛り込まれた。

 

厚生労働省の「終末期医療に関する調査」によると、終末期の療養場所について「自宅で最期まで療養したい」と答えたのは約1割にとどまった(図1)。

 

ただ、「自宅で療養して、必要になればそれまでの医療機関に入院したい」「自宅で療養して、必要になれば緩和ケア病棟に入院したい」を合わせると、自宅での療養を希望する国民が約6割に上った。

 

厚生労働省の「終末期医療に関する調査」のグラフ

【図1】厚生労働省の「終末期医療に関する調査」

出典:中央社会保険医療協議会・医療と介護の連携に関する意見交換(2017年3月22日)

基本方針を受け、2018年度改定では看取りの評価が拡充される方向だ。1月10日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会に示された「これまでの議論の整理(案)」では、看取りにかかる評価の見直しの方向性が明確化。

 

その内容を見ると、できるだけ長く自宅や介護施設などで療養を続けた上で、最期は本人が希望する場所で亡くなることを推進する内容となっていた。

 

具体的には、在宅医療訪問看護などを利用して療養を続け、患者の希望に沿って最期は入院医療機関で亡くなった場合にも、在宅医療を手がける医療機関などによる看取りとして取り扱われるようになる方向だ。

 

厚労省における「看取りの解釈」が拡大されているように読み取れた。

 

 

「ガイドラインの活用」を要件化か

2018年度改定での看取りにかかる評価の見直しの最大のポイントは、訪問診療のターミナルケアにかかる評価について、「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」なども含めた対応が要件化されることだ。

 

同ガイドラインは、人生の最終段階における医療やケアのあり方や、その方針を患者と家族、医療従事者がどのように決定するかの流れを示したもの(図2)。

 

ガイドラインなどを含めた対応を要件とすることで、人生の最終段階における医療やケアの方針を決めるに当たって、患者の意思を尊重させる狙いがある。

 

人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」における医療とケアの方針決定の流れの図

【図2】「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」における医療とケアの方針決定の流れ(イメージ)

 中央社会保険医療協議会・医療と介護の連携に関する意見交換(2017年3月22日)資料を基に編集部作成

 

入院を受け入れる病院においても、患者の意思決定を支援することが求められそうだ。

 

地域包括ケア病棟入院料や療養病棟入院基本料には、自宅や介護施設などから患者を受け入れた場合の加算として「救急・在宅等支援病床初期加算」がある。

 

2018年度改定では、同加算の要件に「入院時に関係機関と連携し、治療方針に関する患者・家族の意思決定に対する支援を行う体制を構築すること」が追加されるとみられる。この支援体制を構築する上でも、ガイドラインが参考になりそうだ。

 

在宅医療を担う医療機関や訪問看護ステーションにおける、看取りの「実績」に関する取り扱いも見直される。

 

医療機関などが連携し、患者の希望に沿った看取りが入院先で行われた場合も、訪問診療を行っていた医療機関の看取りや訪問看護のターミナルケアの実績に算入できるようになる見通しだ。

 

看取り実績は機能強化型在宅療養支援診療所・病院や在宅緩和ケア充実診療所・病院加算、在宅療養実績加算など、ターミナルケアの実績は機能強化型訪問看護管理療養費などで要件とされている。

 

さらに、特別養護老人ホーム認知症高齢者グループホームなどの入所者に外部の医療機関や訪問看護ステーションがターミナルケアを含む往診・訪問診療などを提供した場合、一定の要件の下、ターミナルケアにかかる診療報酬などの算定が認められる方向だ。

 

従来は特養などが介護報酬看取り介護加算を算定すると、医療機関やステーションでの併算定は認められなかった。

 

 

改定内容が明らかになるのは2月の予定だが、議論の整理(案)で示された方向性通りの見直しがなされれば、機能強化型在宅療養支援診療所・病院の届け出が可能になる医療機関は増えるだろう。

 

訪問看護ステーションでも、機能強化型の届け出がかなり増えることになりそうだ。

 

改定によって国民の希望に応じた看取りの提供体制の整備が進むとみられる一方、「そもそも患者の希望がはっきりしない」という課題が残る。

 

医療機関や介護施設を取材していると、人生の最終段階における医療やケアについての本人の希望が明確でなく、意思を確認したり、意思決定を支援することに難しさを感じている医療・介護従事者は少なくないと感じる。

 

厚労省の「終末期医療に関する意識調査等検討会」が行った「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(2014年)によると、自身の死が近い場合に受けたい医療などについて、家族と「全く話し合ったことがない」という国民が55.9%を占めた。

 

自分で判断できなくなった場合に備え、受けたい治療などを記載した書面を作成することの重要さは認識していたものの、実際に作成していたのは3.2%にとどまった。

 

人生の最終段階における医療やケアのあり方について考えることが、まだ一般的とはいえない状況だ。

 

こうした実態を受け、厚労省は昨年8月に「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」を立ち上げた。

 

検討会は国民に対する情報提供・普及啓発のあり方について、この3月をめどに報告書をまとめる。報告書には、普及啓発のための資料を作成する際に含めた方がいい内容や、適切な資料の提供方法などが盛り込まれる予定だ。

 

厚労省医政局地域医療計画課は、「長く医師・患者関係を築いてきた医師などにも、普及啓発に携わってほしい」と説明する。

 

手厚い報酬設定によって関係機関間の連携が強化されても、患者本人の意思が明らかでなければ希望に応じた看取りの推進は難しい。

 

日ごろから患者と関わる医療・介護従事者などが普及啓発に携わり、国民が人生の最終段階の医療やケアのあり方について考えることがもっと身近になることで、希望に応じた看取りが広がるよう期待したい。

 

 

<掲載元>

日経メディカルAナーシング

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