「この症状、病院での受診が必要?」同行先で判断する方法とは|ツアーナースのつれづれ日誌【6】
ツアーナースをしていて、特に責任が重いと感じる場面に「病院を受診するかどうかの判断」が挙げられます。
今回は、その具体的な方法や実際の事例を解説します!
(ツアーナースの仕事内容【まとめ】は▶こちら)
「この症状、病院での受診が必要?」同行先で判断する方法とは
◆目次
症状別!「病院受診」を判断するための具体的な目安
まず、どのような場合に病院を受診するのか、症状別に解説します。
※これから紹介する内容はあくまで目安です。目安を踏まえながら、実際にはそのときの状況に応じて臨機応変に判断してください。
1)発熱
- 頭部をクーリングし、保健室で安静にしていても症状が改善されない
このような場合は早めに受診しましょう。
特に、体温38.5度以上の場合には感染症の可能性も高いので、注意が必要です。
2)頭痛、腹痛、咳、鼻水
- 症状が持続し痛みや苦痛が強い場合
- 喘息発作の場合
早めに受診しましょう。
また、ほかの症状を併発している場合にも受診が必要です。
3)嘔吐、吐き気、下痢
- 症状が続き、食事や水分が摂れない場合
特に小さな子どもほどすぐに脱水になる可能性があります。
「乗り物酔い」や「食べ過ぎ」以外が原因である可能性が高い場合には、早めに受診しましょう。
4)外傷
- 痛みが改善しない場合
- 出血して傷が大きく深い場合
- 歩行や動作に支障が出る場合
早めに受診しましょう。
5)発疹・かゆみ
- 症状が改善されない場合
- 症状が悪化した場合
- 全身の蕁麻疹の場合
特に、食後の発疹はアナフィラキシーの兆候に十分注意し、早めに受診しましょう。
受診するタイミングをどう判断するか
「病院を受診する」と決めたあとは、「今すぐ受診」なのか「少し経過をみてから受診」なのかを判断します。
1. 救急車要請のケース
- 頭部外傷
- 頸部外傷
- 腹部打撲
- 痙攣発作(5分以上続く場合)
- 意識障害
- 大きい関節の明らかな骨折
- 出血量が多い場合
- アレルギーによるアナフィラキシーショック
このような場合には救急車を要請しましょう。
体動によりリスクが高まる場合もあるので、車やタクシーに安易には乗せずに、救急車の要請を検討します。
2. 早めの受診が必要だが、車移動も許容できるケース
- 上腕や下肢などの骨折疑い(大きな関節以外)
- 喘息中発作
- アレルギー症状(軽度~中度のもの)
このような場合は、1分1秒を争うほどの状態ではありませんが、保健室で対応できることがないため、車で病院に向かいます。
しかし、しっかり患部を固定して移動させる、呼吸状態のサポートをするなど、細心の注意が必要です。
病院受診の方法
病院を受診する際は、家族に連絡し、受診の了承を得ることが必要です(緊急時以外)。
また、受診時には家族の代理として付き添うため、保護者に以下のことを確認します。
※中高生以上の場合には、病院での問診の際にも自分で答えられますが、念のため確認しておきます。
そして、近くの病院で受診できるところを探します。
山間部などに宿泊している場合には、近くの病院まで車で30分くらいかかる場合もあります。
そのため、病院に電話をして受診できるかどうかを必ず確認してください。
宿のスタッフは慣れているので、相談するといろいろ教えてくれます。
基本的には病院受診は看護師1人では行きません。
担任の先生と一緒に、本人に付き添うケースが多いです。
しかし、ほかにも具合の悪い子がいる場合などには、看護師が宿に残ることもあります。
病院受診の際に忘れてはいけない持ち物3つ!
病院受診の際には、下記の3つを忘れずに持参しましょう。
・保険証のコピー
・お金(責任者が立て替え金を持っているはずです)
・学校行事の場合:「スポーツ振興センター 災害共済給付制度」の書類(「スポ振」と言っています)
学校行事の場合には、保険証のコピーを担任か責任者が持っています。
そのコピーを持参し、「スポ振」の書類を医師に書いてもらい持ち帰るか、後日郵送してもらってください。
(「スポ振」は学校の行事で病院を受診した場合に給付金がおりるという制度です)
このほかに、「ツアーナース派遣会社指定の用紙」や「学区指定の用紙」に受診内容を書かなければならない場合があります。
持参すると、待ち時間などを利用して忘れないうちに記入ができます。
初めて病院受診の付き添いとなると、普段できることもできなくなってしまったり、慌ててしまうこともあります。
しかし、すべてを看護師が行う必要はありません。
担任の先生や校長先生、宿のスタッフなどと連携し、スムーズに受診できるように心がけるといいと思います。
【事例紹介】少し経過をみるケース
軽度の発熱など、内科的な症状の場合には、まずは経過観察をすることが多いでしょう。
しかし、このようなケースの場合には、受診の判断に悩むかと思います。
「高熱で意識朦朧としている」「呼吸器症状がひどい」などがなければ、そこまで緊急性は高くないと判断します。
しかし、感染症も怖いし、症状が続くようであれば病院受診も考えられるというケースです。
さらに、症状が出た時間帯によって対応にも違いが出ます。
1. 日中に発症した場合
日中に熱が出た場合は、近くの小児科の診療時間などを調べて、診察時間に合わせて経過をみてもいいと思います。
診療結果によってはその日のうちに家族に迎えに来てもらうこともできます。
2. 夜(睡眠前)に発症した場合
夜中に車などで移動して受診する負担を考えるのならば、宿でしっかり安静をとった方がいいと優先順位を考えます。
看護師の判断だけでなく、学校側や家族への連絡、相談も含めて最終決定します。
そして、翌朝になっても解熱していなければ、病院受診するか家族に迎えに来てもらうという対応になるのではないかと考えます。
しかし、もしこの生徒に内科的な持病があった場合には、また検討フローが変わってきます。
夜間でも睡眠前であっても、救急外来を受診する必要があると判断することもあります。
※また、この生徒が感染症などであった場合も考えて、同じ班で行動していた生徒や同室の生徒などの体調面にも注意が必要です。外からの移動後や食事前の手洗い、アルコール消毒を徹底し、咳が出る場合にはマスク着用を促します。
「もしかしたら…」と考えることが重要
私たちは看護師として、症状から今後起こり得ることを想定し、症状の改善、悪化予防に努めることが求められます。
しかし、実際にツアーナースの現場に出ていると、ケースバイケースの要素が強いので、悩むことも多いです。
特に、事故などでのちに重症化してしまったケースでは、なぜ受診せずにそのまま経過観察してしまったのかと悔やまれることもあります。
そうならないために、「たぶん大丈夫だろう」ではなく「もしかしたら」ということ、常に先のことを考えて行動する必要があります。
【白石 弓夏(しらいし ゆみか)】
2008年より看護師として総合病院勤務。
小児科、整形外科・泌尿器科・内科の混合病棟、スポーツ整形外科を経験。
その後、派遣でクリニックや検診、ツアーナース、保健室業務、保育園、看護学校臨時教員などさまざまな働き方をし、現在フリーランスナースとして臨床にあたっている。
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