現場スタッフも負荷軽減を実感|入院中のせん妄はラメルテオンで予防できる!
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入院中の高齢者のせん妄を「予防」する策として、メラトニン受容体に作用する不眠症治療薬のラメルテオン(商品名ロゼレム)を眠前や術前に投与する方法が国内の複数施設から報告されている。ラメルテオンにはせん妄予防の適応はないが、この結果を受け、日本総合病院精神医学会が今年改訂予定の「せん妄の治療指針」で効果について言及する方向で検討が進んでいる。
(増谷彩=日経メディカル)
入院中の患者がせん妄を起こすことで、QOLの低下や入院期間の延長、死亡率の増加などが起こることが知られている。さらに夜間のせん妄が多発すれば、それだけスタッフは対応に追われることになる。
順天堂大学精神医学講座先任准教授の八田耕太郎氏は、「急性疾患で入院してくる高齢者の場合、3割程度はせん妄を発症する。せん妄が起こるたびに鎮静などの対応をする必要があり、スタッフの疲弊にもつながっていた」と語る。
「ラメルテオンによって、せん妄対策を治療から予防へとシフトさせられる可能性がある」と語る順天堂大学の八田耕太郎氏。
八田氏が勤務する順天堂大学医学部附属練馬病院(東京都練馬区)では、せん妄の予防策として、リスクのある患者には午前の自然光を感じられる部屋を用意したり、自分が今どこにいて何をしているのか、見当識をはっきりさせるような呼び掛けを行うといった一般的な環境調整がなされていた。しかし、「せん妄は一種の脳症なので、環境調整だけでは十分な成果は得られない。より実効性の高い予防法が求められていた」(八田氏)。
概日リズムを調節してせん妄を予防?
これまで、抗精神病薬を用いてせん妄を予防したという報告はいくつか見られた。しかし「副作用リスクを無視できない抗精神病薬を、せん妄が起きるかどうか分からない段階で予防のために投与することは考えにくい」(八田氏)。そこで八田氏が着目したのは、メラトニン受容体に作用する不眠症治療薬、ラメルテオン(商品名ロゼレム)だった。
「せん妄の特徴の1つは概日リズムが乱れること。睡眠覚醒リズム障害を予防すれば、せん妄の出現率を低下させられる可能性がある」とラメルテオンに目を付けた理由を語る。そこで、5施設共同の評価者盲検プラセボ対照ランダム化臨床試験を実施した。
対象は、ICUあるいは一般病棟に入院する65~89歳の救急患者のうち、薬剤の経口摂取が可能で48時間以上の入院が見込まれる患者。67例を登録し、ラメルテオン8mgを1日1回、眠前に投与するラメルテオン群(33例)とプラセボを眠前投与するプラセボ群(34例)に無作為割り付けして、せん妄の出現を7日間観察した。
米国精神医学会の診断基準DSM-IVに従ってせん妄の有無を診断した結果、ラメルテオン群でせん妄を発症したのは3%(1例)で、プラセボ群では32%(11例)と、ラメルテオン群はプラセボ群に比べてせん妄出現の頻度が有意に低かった(P=0.003、95%信頼区間:0.01-0.69)。副次的評価として「Delirium Rating Scale-R-98(DRS-R98)」によりせん妄の重症度を評価した(図1)。観察した7日間のせん妄の累積非出現率も、プラセボ群よりラメルテオン群で高く、良好な結果が得られた(図2)。
図1 ラメルテオン群とプラセボ群におけるせん妄重症度の分布
せん妄の重症度は「Delirium Rating Scale-R-98(DRS-R98)」により評価した。(図2とも、出典:Hatta K,et al. JAMA Psychiatry 2014;71:397-403.)
図2 ラメルテオン群とプラセボ群におけるせん妄の累積非出現率
せん妄の累積非出現時間はラメルテオン群6.94日(95%CI:6.82-7.06)、プラセボ群5.74日(95%CI:5.05-6.42)だった。
これらの結果から八田氏は、「急性疾患で入院した高齢者にラメルテオンを眠前投与すると、せん妄が予防される効果があることが示唆された。重篤な副作用が少ないラメルテオンは、現場でのせん妄対策を治療から予防にシフトさせられる可能性がある」と考察する。
なお、日本総合病院精神医学会治療戦略検討委員会は現在「せん妄の治療指針」の改訂作業を進めている。同委員会委員長も務める八田氏は、「ラメルテオンの適応にせん妄予防はないが、このような結果が得られたことから、新指針ではラメルテオンのせん妄予防効果に触れる予定。今回の臨床研究も治療指針の改訂作業の一環だった」と語る。改訂版は2015年内に取りまとめる予定だ。
外科手術後のせん妄も低減
高齢の入院患者以上にせん妄出現率が高いと報告されているのが、外科手術を受けた後の患者だ。佐世保中央病院(長崎県佐世保市)のICUに勤務する看護師、牛島めぐみ氏は、「ICU入院患者のせん妄に対応する日々が続き、スタッフが疲弊していた」と言う。こうした状況の中、概日リズムを整える機序に着目し、同院でもラメルテオンによるせん妄予防効果を評価する臨床研究を行った。
佐世保中央病院看護師の牛島めぐみ氏。浦川昂大氏、谷村慈哉氏、古川みさき氏、松本英里氏ら、ICUに勤務する看護師のチームで研究を行った。
対象は、腹部大動脈瘤で人工血管置換術を施行した患者。ラメルテオンを術前に投与したラメルテオン群(14例)と非投与群(6例)のせん妄出現率を比較した。せん妄の評価は、ICUにおけるせん妄評価スケールのIntensive Care Delirium Screening Checklist(ICDSC)を用いた。
ラメルテオン群には、入院した日から術後の数日間にわたって1日1回8mgを投与した。術前の入院期間は1週間から3日と患者によってさまざま。術後の投与は、ICU入室期間は全例に投与し、一般病棟に移ってからは「せん妄が起こりそう」と看護師が感じた例にのみ投与した。その結果、非投与群では50%(3例)にせん妄が出現したが、ラメルテオン群では28%(4例)に抑えられた。また、ICU入室期間も非投与群は5.3日、ラメルテオン群では2.6日と短縮した。
なお、この研究では鎮静作用を持つ漢方の抑肝散を投与する群(8例)も後から追加した。8例の観察を終えた時点での抑肝散群のせん妄出現率は25%(2例)、ICU入室期間は1.8日と、ラメルテオンの効果を上回る可能性もある。抑肝散による研究は現在も継続して症例を増やしているという。
牛島氏は、薬剤を用いた予防策に対して、「せん妄がゼロになるわけではないが、対応が必要となるようなせん妄を起こす患者が減り、現場の負荷はかなり軽減した」と実感している。さらに、「絶飲食期間を短縮するためのケアや環境調整に、薬剤によるせん妄予防を加えることで、より早期の回復が期待できる」と展望を語っている。
<掲載元>
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