最終更新日 2018/02/21

播種性血管内凝固症候群(DIC)

播種性血管内凝固症候群(DIC)とは・・・

播種性血管内凝固症候群(はしゅせいけっかんないぎょうこしょうこうぐん、disseminated intravascular coagulation〈DIC〉)は、さまざまな疾患が原因で全身の細血管内に微小血栓ができたり止血しにくくなったりする症候群のことである。

 

発症機序としては、血液の凝固が亢進し、微小血管内にフィブリン(線維素)血栓が形成され、血小板と凝固因子が消費される。そのため出血傾向を呈し、さらに二次的線維素溶解(線溶)も亢進するため、出血傾向がより一層強まる。

 

原因

DICの原因疾患として、白血病・悪性腫瘍・敗血症などの重症感染症・外傷・熱傷・低体温・自己免疫性疾患・急性循環不全・胎盤早期剥離などがある。

 

臨床所見

基礎疾患により凝固と線溶のバランスが異なり、症状や病態に差がある。白血病などでは線溶亢進があるため出血症状が主体であるが、重症感染症では線溶が抑制されるため、血栓による虚血に基づく症状が現れやすい。
出血症状は共通してみられ、皮膚や粘膜の出血、採血部位の止血困難のほか、頭蓋内出血、肺出血、消化管出血もしばしば認められる。虚血症状としては、意識レベルの低下・呼吸不全・腎不全・肝機能障害などがあり、多臓器不全に至ることもある。

 

検査所見

血小板減少、プロトロンビン時間(PT)および活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長、フィブリノゲン低下、フィブリン分解産物(FDP、D-ダイマー)の増加を認める。これらの検査所見をそれぞれの基礎疾患に対するDICの診断基準に照らして診断する。

 

鑑別診断

血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura〈TTP〉)や溶血尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome〈HUS〉)などの血栓性微小血管障害(thrombotic microangiopathy〈TMA〉)では全身性の血小板血栓形成により消費性血小板減少が出現する。一見DICに類似するが、通常凝固系異常を伴わない。

 

治療

DICの治療とともに、基礎疾患の治療が非常に重要となる。
DICの治療としては、(1)抗凝固療法(ヘパリン・合成プロテアーゼ阻害薬・アンチトロンビン・トロンボモジュリン)、(2)補充療法(新鮮凍結血漿や血小板濃厚液の輸血)が行われる。

執筆: 梶原道子

東京医科歯科大学医学部附属病院  輸血・細胞治療センター 副センター長/講師

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