妊娠初期とは・・・
妊娠初期(にんしんしょき、first pregnancy trimester)とは、妊娠0週~15週6日までの期間を指す。妊婦にとっては妊娠の実感が薄いが、胎児は急速に成長し、各器官が形成されていく重要な時期である。
妊娠初期の症状
無月経は妊娠初期の主要な症状である。妊娠可能な年齢の女性で月経の遅れを認める場合は妊娠を疑うべきである。
また、正常な妊娠初期では性器出血も比較的よく見られる。しばしば月経周期に一致して性器出血が生じる場合もあり、妊娠と気づかないこともあるため注意が必要である。
ほかには、嘔気・嘔吐、乳房の腫脹・圧痛、疲労感、腹部膨満感、便秘、息切れ、腰痛など非特異的な症状を呈する。
検査・診断
妊娠の診断は、主に血液中または尿中のヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)の検出に基づき行われる。
超音波検査による胎嚢の確認や胎児心拍活動の確認なども診断方法としてはあるが、精度は妊娠週数に依存する。胎嚢は経膣超音波検査を使用した場合に妊娠4.5~5.0週で初めて観察される。胎児の心拍活動は、経腹超音波法では妊娠8週まで、経腟超音波法では遅くとも6週末までには検出できる。
この時期の注意点
妊娠初期の異常としては、妊娠悪阻(おそ)、流産/不育症、子宮外妊娠(異所性妊娠)が代表的である。
(1)妊娠悪阻
つわりが悪化した状態である。著しい嘔吐により食物や水分の摂取が困難となり、脱水、栄養障害、電解質異常を起こすため治療が必要である。
妊婦へは、休養を取り心身の安静を図ることが症状緩和につながることを説明し、少量・頻回の食事摂取と水分補給を促す。ほかには、重症度に応じて十分な輸液、ビタミンB製剤、制吐薬を使用する。
(2)流産/不育症
妊娠12週未満の流産を早期流産、妊娠12週以降22週未満の流産を後期流産という。流産の大多数は早期流産である。
早期流産の原因は、胎児の染色体異常によるものがほとんどである。後期流産では、子宮内胎児死亡、絨毛膜羊膜炎、子宮頸管無力症に起因するものが多く、妊娠を通じいつでも起こる可能性がある。
不育症とは、妊娠はするが流産、子宮内胎児死亡を繰り返して生児が得られない状態をいう。
(3)子宮外妊娠(異所性妊娠)
受精卵が子宮腔内以外の場所に着床し発育した状態をいう。その部位により卵管妊娠、卵巣妊娠、腹腔妊娠、頸管妊娠に分けられる。部位別の頻度としては卵管妊娠が最も多い。
診断後の治療方針としては、手術療法、薬物療法、待機療法がある。治療の適応は、患者の全身状態、異所性妊娠部位、腫瘤径などを参考に慎重に判断する。
引用・参考文献
1)日本産科婦人科学会,日本産婦人科医会.産婦人科診療ガイドライン―産科編2020.(2023年5月閲覧)
2)Lori A Bastian,et al.Clinical manifestations and diagnosis of early pregnancy.UpToDate.(2022年12月閲覧)
3)綾部琢哉ほか編.標準産婦人科学 第5版.医学書院,2021,p697.