FP療法(化学療法のポイント)/食道がん
この連載では、抗がん剤のポイントや注意点について解説します。
今回は、食道がん(食道癌)の患者さんに使用する抗がん剤「FP療法(フルオロウラシル+シスプラチン療法)」について、レジメンや副作用、治療成績について紹介します。
第2話:『FP療法(看護・ケアのポイント)/食道がん』
神崎洋光
(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学)
〈目次〉
FP療法は食道がんの患者さんに行う抗がん剤治療
FP療法(フルオロウラシル+シスプラチン療法)は、切除不能な食道がんや切除可能な食道がん(ステージ2、3)の術前化学療法として投与される抗がん剤治療です。ステージ2や3の切除可能な食道がんの術前化学療法としては、2コースの投与が標準的です。放射線と併用して行う場合も2コースの投与を行います。
一方で、切除不能な食道がんに対して行う場合は、効果がなくなるまで継続します。放射線治療と併用する場合は投与期間、用量が少し異なるため注意しましょう。
FP療法で使用する薬剤
FP療法で使用する薬剤は、表1のとおりです。
表1FP療法で使用する薬剤
FP療法のレジメン
フルオロウラシル(5-FU)は、1~5日目(Day1~5)に持続投与し、6~28日目は休薬します。シスプラチン(ランダ)は、1日目のみ投与します。(表2)。
表2FP療法のレジメン
なお、放射線と併用する場合は、フルオロウラシル(5-FU)の投与は、1~4日目になります。
FP療法で使用する薬剤の投与方法(表3)
表3FP療法の投与方法
なお、本投与方法は、抗がん剤のみの投与の場合です。放射線と併用する場合は、シスプラチン(ランダ)を80mg/m2から70mg/m2に減量し、フルオロウラシル(5-FU)の投与を4日間にするため、5日目の投与はなくなります。
FP療法の代表的な副作用
FP療法の代表的な副作用は、腎機能障害、嘔気や嘔吐、骨髄抑制、発熱性好中球減少症(FN)、便秘、末梢神経障害、脱毛、口内炎、吃逆などがあります。
シスプラチン(ランダ)は、腎機能障害を起こす代表的な抗がん剤のため、尿量が減ると腎臓が障害されてしまいます。しっかりとした輸液、水分摂取、必要に応じた利尿剤の使用が大切です。また、シスプラチン(ランダ)によって吃逆が出る患者さんが多く、止めるのに難渋することもあります。
急に起こる副作用は、腎機能障害、嘔気や嘔吐、便秘、吃逆などがあります。
遅れて出てくる副作用は、骨髄抑制、末梢神経障害、脱毛、口内炎などがあります。
FP療法の治療成績
術前化学療法として行う場合は、術後の再発リスクを下げます。
切除不能な食道がんの緩和的治療に用いる場合は、腫瘍を小さくする可能性が30~40%です。投与した全員に効果があるわけではありません。
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[監 修]
齋藤信也
岡山大学大学院保健学研究科 教授
[編 集]
西森久和
岡山大学病院 血液・腫瘍内科
[執 筆]
神崎洋光
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科消化器・肝臓内科学
*本連載では、薬剤の厳密な指示・副作用・投与スケジュールなどについて記載されていますが、これらは2017年5月時点のもので、変更される可能性がございます。薬剤の使用にあたっては、製品に添付されている最新の情報を十分にご参照ください。
*本連載では、登録商標マーク®の記載はすべて省略しています。