アウェアネス・リボン |いまさら聞けない!ナースの常識【26】
毎日の業務の中で触れているけど、『いまさら聞けない』ことってありませんか?
知っているつもりで実は説明できない基礎知識や、ちょっと気になるけど調べるほどでもないな、なんてこと。
そんな看護師の素朴な疑問を、元看護師ライターがこっそり教えます。
Vol.26 アウェアネス・リボン
アウェアネス・リボンと聞いて何が思い浮かぶだろうか。
アウェアネス・リボンとは、こんな形をしたリボンやそれを描いたもののことだ。さまざまな社会問題や社会運動において、支援や賛同のシンボルとして使われている。疾患に関するものだけでなく、世界中でさまざまなテーマについて設定されており、色とりどりのアウェアネス・リボンがある。
アウェアネス(Awareness)とは、「意識」「気づき」という意味。つまり、アウェアネス・リボンとは、疾病に限らず、何らかの社会問題に対して支援を行っていることや、関心を持っているという意思表示の意味を持つ。
HIV/エイズのレッド・乳がんのピンク
それぞれの意味が世界中でも浸透しており、特に有名なのはレッド・ピンクのリボンだろう。きっと一度は目にしたことがあるのではないだろうか。
●レッドリボン(HIV/エイズに対する理解と支援の象徴)
現在はHIV/エイズの理解・支援の象徴として世界的に知られているが、そもそものレッドリボンとは、病気や事故により人生半ばで旅立った人たちへの「追悼の気持ちを象徴するもの」としてヨーロッパで古くから使われてきた。現在の意味で使われるようになったのは、1990年代に入るころアメリカで始まったレッドリボン運動が最初といわれている。
この頃、アメリカではエイズで死亡する有名アーティストが急増した。このことをきっかけに、彼らに対する追悼の気持ちと、エイズに苦しむ人への理解と支援の意思の象徴として始まったのがレッドリボン運動。現在では世界中に広がり、UNAIDS(国連合同エイズ計画)のシンボルマークとしても使われている。
●ピンクリボン(乳がんに対する世界規模の啓発キャンペーンのシンボル)
そもそもの起源については諸説あるようだが、アメリカでピンクリボン運動が広がり出したのは1990年初めころのこと。その後日本に入ってきたのは2000年ごろ、日本最大の乳がん患者支援団体が東京タワーをピンク色にライトアップしたことがきっかけといわれている。現在の日本では、例えば女性向けの下着メーカーや化粧品メーカー、生命保険の企業や製薬会社などが協賛し、その運動の規模は年々広がっている。
様々な色があります、アウェアネス・リボン
このほかにも様々な色のリボンがある。さまざまな意味を持つ色もあるので見てみよう。
●オレンジリボン
児童虐待防止
●ホワイトリボン
平和・飢餓、母体保護・母子の健康、阪神淡路大震災への追悼・復興の願い、思春期の性的少数者の自殺を予防
●ブルーリボン
受動喫煙防止、北朝鮮拉致被害者の救出・支援(日本国旗を付加する)
●シルバーリボン
●グリーンリボン
臓器移植の普及、臍帯血の有用性と臍帯血を用いた再生医療の促進を啓蒙
●パープルリボン
女性への暴力根絶・膵臓がんの啓発と撲滅のほか、潰瘍性大腸炎、クローン病、甲状腺がん、全身性エリトマトーデス、大腸がん、注意欠陥・多動性障害、てんかん、肺高血圧、ハンチントン病、DVや、動物虐待、同性愛者差別・・・など多数
これだけさまざまな分野で利用されているアウェアネス・リボン。アナタの仕事に関連するテーマもあるだろう。もしアナタが外科系の看護師ならピンクリボン、メンタルヘルス系の看護師ならシルバーリボン、小児科看護師ならオレンジリボン、感染症や免疫疾患に関わる看護師ならレッドリボンなど、自分の得意とする分野に関係するリボンについて、ちょっと関心を持ってみてはどうだろうか。
アウェアネス・リボン自体を 「偽善」と捉える人も中にはいるかもしれない。それぞれのリボンをモチーフにしたステッカーやピンバッジ・雑貨などを購入するだけで、その団体に寄付をしたことになる。しかし、それ自体が積極的な活動に結びつくわけではないので、「見せかけの支援」を人々に許すものだという批判もある。
だが、支援したいという気持ちは尊重すべきものであると思うし、看護師という職業柄、これらの問題に直面する機会も多い。例えば自分が仕事で関わる疾患や制度について、それが社会の中でどんな認識をされているのかを知り理解するのに、アウェアネス・リボンは良いきっかけになるのではないだろうか。
【岡部美由紀】