「乳がん」について看護師が知っておくべき5つのこと|働くナースが知るべき病気【15】

婦人科医の清水なほみが、看護師の皆さんに知っておいてほしい病気についてお知らせします。

 

 

働くナースが知るべき病気【15】

「乳がん」について看護師が知っておくべき5つのこと

がんは他のがんと比べると治る確率は高いですが、年齢を重ねるごとに発症リスクは増加します。

 

2011年のがん対策情報センターによる調査で、日本人女性の12人に1人が乳がんにかかるという結果も発表されています。

 

そのため、女性が多い看護師のみなさんには、ぜひ知っておいてほしい病気です。

 

看護師が乳がんにかかりやすいというデータはありません。

 

ですが、「不規則な生活」が原因の1つとしてあるので、夜勤が多い看護師さんは注意してほしいと思います。

 

 

 

 

 

夜勤の多い看護師は要注意!

乳がんの発生に関係しているといわれているのが「エストロゲン(卵胞ホルモン)」です。

 

エストロゲンは女性ホルモンの1つで、乳管や女性生殖器の発達を促す役割があります。

 

このエストロゲンが過剰に分泌された状態が続くと、乳がんの発生リスクが高まると考えられています。

 

エストロゲンが過剰に分泌されやすい人の特徴は以下のとおりです。

 

・出産経験がない

・肥満

授乳経験がない

 

この特徴がなくても、30歳代から50歳代前半の女性が発症しやすいので、働き盛りの看護師は要注意。

 

また、喫煙や過度の飲酒習慣は、乳がんリスクをさらに高めるのでできるだけ控えましょう。

 

乳がんにはさまざまな原因がありますが、その原因の1つとして睡眠不足があげられています。

 

夜間に良質な睡眠をとると、メラトニンが生成されます。メラトニンの分泌が少ないとエストロゲンの分泌量が増え、乳がんの発症率が高くなるという意見もあります。

 

このメラトニンは、体内時計の調節だけではなくがんを抑制する働きがあるため、規則正しい生活が予防には欠かせません。

 

 

 

忙しくても検診を受けよう!マンモグラフィーとエコー検診って?

乳がんは、腫瘍が2cm以下の初期に発見できれば、その生存率は99%以上といわれています。そのため、いかに早期に発見するかが重要。

 

しかし、乳がんは痛みやかゆみなどの初期症状がほとんどありません。乳がん検診を受けることで、ごく早期の乳がんも見つけられる場合があるので定期的な受診をお勧めします。<

 

乳がんの検診には、マンモグラフィーと超音波(エコー)検診があります。

 

マンモグラフィーは板で乳房を挟んで撮影するレントゲン検査で、超音波(エコー)検査は「プローブ」というセンサーで乳房に超音波を当てる検査です。

 

乳腺の発達具合や、年齢によって適した検査は異なりますが、両方を併用することでより精度の高い検診を行うことが可能です。

 

マンモグラフィー検診と超音波検診のメリット・デメリット

 

 

乳房温存手術の意外な落とし穴

もしも乳がんになった場合、治療には手術、放射線療法、薬物療法などがあります。

 

発見されたときの進行具合や、乳がんの細胞といった情報にもとづいて、最も適した治療内容が決定されます。

 

現在、日本では乳がん患者の3人に2人が乳房温存を希望しているといわれています。しかし、乳房を残せる反面デメリットもあります。

 

乳房温存手術を受けた患者さんの、およそ30%が10年以内に再発するといわれており、再発予防のために術後の放射線治療は欠かせません。

 

身体的な負担はもちろんですが、精神的な負担も少なくないため、乳房温存手術を受ける場合はデメリットも考慮する必要があります。

 

 

 

たった5分! お風呂で簡単セルフチェック

乳がんは、自分で発見できる唯一のがんといわれています。定期的な検診のほかに、セルフチェックも効果的。

 

月に1回程度、入浴のときなどに行ってみましょう。一番乳腺が張らない月経直後の時期に行うのがベターです。

 

自宅で簡単にできるセルフチェック

 

(1)鏡の前でチェック

両脇をあげて、普段の乳房と変化がないかチェックしましょう。

 

□ 左右の乳房の形や大きさ、色に変化はないか

皮膚にひきつれや、へこみはないか

□ 乳首が陥没したり、ただれたりしていないか

 

(2)触ってチェック

触ってチェックする場合は、力を入れないように気を付けましょう。

 

・乳房

腕を上げて、人さし指・中指・薬指の3本で乳房に触ってしこりがないか確かめましょう。

 

・分泌物

左右の乳首をつまんで分泌物をチェックしましょう。

 

・わきの下

左右の脇を触って、しこりがないか確認しましょう。

 

□ 乳房にしこりや、違和感がある

□ 血が混じっている

□ 透明な液が出ている

 

上のチェック項目のいずれかに該当する場合、乳腺専門医がいる「乳腺外科」か「外科」への受診をお勧めします。

 

産婦人科では診察できないので注意してください。

 

 

 

乳がん最大の予防は生活習慣の改善

定期健診や、セルフチェックで乳がんを早期発見することはとても重要ですが、予防もしっかり行いましょう。

 

数年前から「ノーブラ」が乳がん予防になると話題になっていますが、はっきりとした確証はありません。胸の形が崩れる恐れもあるため、取り組む場合は注意が必要です。

 

乳がんの予防

食生活の改善

動物性脂肪の多い食品や高カロリーの食事には気を付けましょう。

 

・適度な運動

定期的に体を動かすことで、乳がんの発生率を下げることができます。ただし、過度の運動は逆効果です。毎日20~30分くらいのウォーキングを心がけましょう。

 

・十分な睡眠をとる

夜間にしっかり睡眠をとることで、がんを抑制する働きがあるメラトニンが生成されます。

 

・禁煙する

喫煙者は、非喫煙者に比べ乳がんの発症リスクが高くなります。

 

・過度のアルコール摂取は控える

適度な飲酒を心がけましょう。厚生労働省では「節度ある適度な飲酒」を1日ビール瓶1本程度としています。

 

楽な方法に頼らず、生活習慣を改善することが大切です。

 

それに加え、喫煙や過度のアルコール摂取を控えることで、乳がんだけではなくその他のがんや成人病など、さまざまな病気の予防にもつながりますよ。

 

あなたも、この機会に生活習慣を改善してみてはいかがでしょうか。

 

(参考)

最新がん統計( 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター)

「乳がん」を自分でみつける一般社団法人 日本家族計画協会)

原発乳がんの治療 治療の流れ(ファイザージャパン がんを学ぶ)
 

 


【清水なほみ】

日本産婦人科学会専門医で、ポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長。産婦人科・女性医療統合医療を専門に、患者に最適な医療を提供。クリニックのほかに、NPO法人やAll aboutガイドなどでも情報提供や啓発活動を行っている。

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