小児の点滴静脈内注射

『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。

今回は小児の点滴静脈内注射について解説します。

 

山元恵子
富山福祉短期大学看護学科長

 

点滴静脈内注射を小児に安全・確実に施行するには、患児と家族にわかりやすく説明し、同意を得ることが必要である。

 

その上で、本人確認・注射内容の確認を確実に行い、点滴開始後も訪室して観察を行うことが大切である。

 

苦痛を和らげるケア

実施前

  • 1注射は苦痛を伴う処置である。患児と家族にその必要性と効果をわかりやすく説明し、同意を得ることが必要。患児には心理的準備(プレパレーション)が行えるよう、処置の具体的イメージを発達に応じて伝える。
  • 2説明時は患児に希望を問いかけ、反応をみる。患児にどうしてほしいか、医療者の望みを伝える。
    • 例えば、「泣いてもいいから、手を動かさないでね」

 

実施時

  • 3処置が迅速に行えるよう準備し、家族に点滴時の固定や抑制をさせないほうがよい。患児に、「母や家族がそばにいたのに助けてもらえなかった」という思いをさせないようにする。
  • 4必要に応じて家族が席を外すように取り計らうなど、実施者の緊張を和らげ、スムーズに実施できるよう処置環境に配慮する。
  • 5患児との楽しい会話を心がけ、緊張を和らげる。処置から気をそらすことも必要である。
  • 6穿刺時は、患児とタイミングが合うよう声をかける。
    • 例えば、「今、ちくっとするけど、手を動かさないでね」

 

実施後

  • 7患児のがんばりをほめる。
  • 8家族との再会時にも、患児ががんばったことを伝えて、ほめる。

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点滴静脈内注射の目的

  • 1水分・電解質・栄養の補給。
  • 2薬剤効果の即効性の期待。
  • 3静脈経由での薬剤注入。
  • 4緊急時の静脈ルート確保。

 

点滴静脈内注射の種類

静脈内留置・中心静脈内高カロリー輸液・輸血

 

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小児の点滴静脈内注射の手順

1 必要物品の準備

必要物品は、以下のとおり(図1)。

 

図1必要物品

必要物品

❶指示箋

❷輸液ボトル 

❸輸液セット

❹接続チューブ

❺延長チューブ(体動が激しい場合) 

留置針 

❼固定用テープ(用途別にカット)

❽シーネ(重さを測定)

❾肘枕  

❿駆血帯 

⓫アルコール綿

⓬処置用シーツ

⓭ビニール袋  

⓮針捨容器

*必要時、検体容器(小児は穿刺時に血液検査を実施することが多い)

 

POINT

■注射針は抜針後、実施者が直接専用の耐貫通性容器に捨てる。容器は捨てやすい位置におく(図2)。

 

図2針捨容器

針捨容器

 

CHECK!

指示内容を「目で、指差しで、声出しで」確認!

注射の実施前に、医師の指示内容に変更がないことを指示箋で確認。

 

取り出した注射薬は、患者氏名(Right patient)、薬剤名(Right drug)、注射量(Right dose)、注射方法(Right route)、時間(Right time)、注射目的(Right purpose)を確認する。

 

この6Rについて、次の3回のタイミングで「目で、指差しで、声を出して」確認することが基本である。

①保管場所から薬品を取り出すとき

②注射器に薬液を吸い上げるとき

③注射薬のアンプルなどを片付けるとき

 

さらに未経験事項や輸血、特殊薬剤、薬効が急激な薬剤については、上位経験者の看護師と2名で6Rの確認を行う。

 

6Rを確認!

患者氏名(Right patient)

薬剤名(Right drug)

注射量(Right dose)

注射方法(Right route)

時間(Right time)

注射目的(Right purpose)

 

CHECK!

輸液ボトル・輸液セットの準備

直前の手洗いを行い、点滴ボトルに専用に輸液ラインをセットする(図3)。この際、空気が輸液ラインに混入しないよう注意が必要である。 輸液ラインの長さは、患児の状態や動きをみて決める。

 

準備作業(プライミング)は、途中で中断しないことが重要。中断が事故の原因となる場合がある。

 

定量筒付き輸液セットを使用する場合や、精密な輸液を行うために輸液ポンプを使用する場合もある。輸液ポンプを使用する場合は、取り扱い手順を守る。

 

図3輸液ボトル・輸液セットの準備

輸液ボトル・輸液セットの準備

 

 

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2 患児・家族への説明と同意

患児・家族に点滴の必要性を説明し、同意を得る。実施者・介助者の2名以上で、処置室で行う。

 

POINT

■必ず、実施者・介助者の2名以上で行う。

■日常生活を過ごす病室ではなく、処置室で実施。

■排泄をすませておく(図4)。

 

図4患児・家族への説明と同意

患児・家族への説明と同意

 

 

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3 静脈留置針の穿刺と固定

❶注射針を静脈に穿刺し、血液の逆流を確認する(図5)。内筒針を固定し、外筒針を血管内に進める。

 

次に外筒針先端の血管を圧迫止血しながら、内筒針を抜去。内筒針は、実施者がただちに針捨容器に廃棄する。

 

駆血帯を外し、刺入部のみを固定用テープで固定する。検体採取がある場合は、駆血帯は外さず、血液の逆流を待つ。採血時はシリンジ、スピッツを用意する。

 

図5血液の逆流を確認

血液の逆流を確認

 

POINT

■注射針は、抜去した実施者がただちに針捨容器に廃棄(図6)。

■リキャップは行わず、針刺し事故を防止する。

 

図6注射針はただちに廃棄

注射針はただちに廃棄

 

❷刺入部のハブの下にアルコール綿を敷いてから、留置針に輸液ラインをしっかりと接続する(図7)。

 

図7アルコール綿を敷き、血液汚染を防止

アルコール綿を敷き、血液汚染を防止

POINT

■ハブの下にアルコール綿を敷き、血液汚染を防止する。

■接続部は、抜けないようしっかりと接続。

❸輸液ラインと留置針の接続部の下に固定用テープを貼り、皮膚を保護する(図8)。

 

図8固定用テープで皮膚を保護

固定用テープで皮膚を保護

 

❹❺ 切れ目を入れた固定用テープを刺入部から接続部を覆うように貼り、さらに、刺入部が手の甲に対して15〜20度の角度に保たれるよう、接続部の側面に貼り付けて支える(図9図10)。

 

図9刺入部と手の甲は15〜20度

刺入部と手の甲は15〜20度

図10留置針が動かないよう、しっかり固定

留置針が動かないよう、しっかり固定

 

POINT

■刺入部と手の甲が15〜20度の角度に保たれるよう、固定用テープで保持する。

EVIDENCE

■体動などにより留置針の先端が動くと、血管壁を傷つけたり、留置針が抜けてしまうなどのトラブルにつながる。

 

❻留置針が体動で抜けないよう、必要時、シーネを当てて良肢位をとり、テープで固定する(図11図12図13)。

 

この際、シーネの幅、長さは患児に適したサイズを選択する。シーネは重さを測定しておき、患児の体重測定の際、差し引く。

 

図11シーネ

シーネ

 

図12シーネを当てて固定

シーネを当てて固定

図13小児用の保護カバー

小児用の保護カバー

POINT

■テープはきつく締めすぎないよう注意。

■シーネを当てて、良肢位で固定。

■接続部を保護する小児用カバーも市販されている。

 

EVIDENCE

■テープをきつく締めすぎると、循環障害の危険がある。

■シーネを当てて固定することで、より確実に刺入部の安静を保つことができる。

 

CHECK!

テープ固定のポイント

血管走行に沿って静脈留置針をテープで固定する(図14)。

 

小児は体動が激しく、刺入部の安静を保つことがむずかしい場合があるため、必要に応じて、さらにシーネを当てて良肢位で固定。シーネは患児に適したサイズを選択する。

 

テープによる固定はきつく締めすぎないようにし、循環障害を予防する。

指先がみえるように固定し、観察を行うことが大切である。

 

図14指先がみえるように固定

指先がみえるように固定

 

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4 点滴開始後の観察

点滴開始後は、患児→刺入部→固定部→接続部→輸液ライン→輸液ポンプ→輸液ボトル→点滴スタンドと、患児から順序よくたどって観察する(図15)。

 

静脈内注射は、直接血管内に薬液が注入されるため、患児の状態の変化に十分、注意が必要である。

開始後5分・15分・1時間ごとに訪室して観察する。

 

訪室の際は、患児の状態だけでなく、刺入部から点滴スタンドまで、上記の順序でたどって異常がないかを確認する。

 

図15点滴開始後の観察ポイント

点滴開始後の観察ポイント

 

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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ

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