小児のグリセリン浣腸法
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回は小児のグリセリン浣腸法について解説します。
山元恵子
富山福祉短期大学看護学科長
小児の直腸にグリセリン液を投与
直腸内与薬と同様に、肛門部から薬液を直腸内に投与する処置にグリセリン浣腸法がある。
浣腸は、腸壁に薬液による刺激を与え、腸の蠕動運動を促進し、便やガスを排出させる方法である。
生後3か月ごろまでは、肛門部を綿棒などで刺激することで、排便が期待できる。
発達段階に応じた配慮
乳児期
排便反射をコントロールできない
排便反射をコントロールすることができず、浣腸液を体内にとどめることができない。グリセリンの濃度や注入量、注入速度、腹圧のかからない体位を工夫する。
排便を我慢することは困難であるため、オマルなどを用意する。
学童期・思春期
インフォームド・コンセント、羞恥心への配慮
浣腸の目的・方法・所要時間・苦痛などを説明し、同意を得る。羞恥心が強いため、環境を整え、プライバシーの保護に努める。
禁忌
●腸管内の炎症、穿孔、出血の恐れがある患者
●嘔吐、腹痛など、急性腹症が疑われる患者
●立位による浣腸(カテーテルによる直腸穿孔の危険がある)
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小児のグリセリン浣腸法の手順
❶小児用ディスポーザブル浣腸器には、Sタイプ30mL、Lタイプ30・40mL(成人用60・90・120・150mL)がある(図1)。医師の指示量に合わせて、適切な器具を選択する。
図1 小児用ディスポーザブル浣腸器
❷浣腸器は、50℃の湯(1L)に5分間つけ、38〜40℃に温めておく(図2)。
図2 浣腸器を温めておく
❸指示を確認し(図3)、浣腸液の量を指示量に合わせる。
図3 指示を確認する
❹浣腸器のストッパーを挿入の長さに合わせる(図4)。浣腸器を押して、先端部までグリセリン液を満たす(図5)。
図4 浣腸器のストッパーを挿入の長さに合わせる
図5 先端部までグリセリン液を満たす
❺浣腸器の先端に潤滑油(ワセリンやオリーブ油など)をつける(図6)。
図6 先端に潤滑油をつける
❻患児と家族に説明を行い、本人であることをネームバンドで確認する。
乳児は仰臥位、幼児・学童は左側臥位でお尻を突き出した体位をとる。看護師は手袋を装着し、浣腸器先端部を直腸壁に沿って挿入。
浣腸液はゆっくりと注入する(図7)。1〜2分間、肛門部を押さえてから、排便を促す。
図7 浣腸液はゆっくりと注入する

POINT
■乳児は、両足をまとめて挙上すると股関節脱臼の危険があるため、あぐらをかくようにして両足を保持する。
■幼児・学童には挿入時、深呼吸を促し、「あー」と声を出させる。
指示量が少ない場合
小児では、浣腸液の容量や濃度が異なる(表1)。注入器を活用し、指示量を測定するとよい(図8、図9)。
表1 発達段階に応じたグリセリン浣腸法
図8 カテーテル部を切る
浣腸液を注入器に移し、指示量を測定する。切離したカテーテル部を注入器に接続し、浣腸を行う(図9)。
図9 浣腸液を注入器に移し注入器に接続する
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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
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[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ