バイタルサイン(③腋窩温の測定、直腸検温)
『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』(インターメディカ)より転載。一部改変。
今回は小児の腋窩温の測定と直腸検温について解説します。
風間 敏子
元 難病子ども支援全国ネットワーク電話相談室
バイタルサインの測定
患児は、症状を自分から的確に訴えることができない。
また、乳幼児は症状の変化が速いため、体温・脈拍・呼吸・血圧などを注意深く観察し、早期診断・治療に生かすことが大切である。
患児の表情・機嫌を観察し、バイタルサイン測定が可能であるかどうかを判断。測定は安静時・睡眠時に行う。患児と家族に、バイタルサイン測定の必要性を説明する。
POINT
・正常範囲を確認しておく。
・運動・食事・入浴・啼泣直後の測定は避ける。
・まず、患児の表情・機嫌を観察する。
バイタルサインの測定に必要な物品は図1のとおり。
❶体温計
❷ストップウォッチ
❸血圧計
❹アルコール綿
❺パルスオキシメーター(必要時)
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腋窩温の測定
❶腋窩の発汗状態を確認する。湿っている場合はタオルで拭く。
❷体温計をケースより出し、初期表示が88.8になっていることを確認する(図2)。体温計の先端が腋窩の最深部に対して45度で、密着するよう当てる(図3)。麻痺がある場合は健側で測定する。
POINT
・体温計の種類・環境・室温・測定時間など、測定条件を一定にする。
EVIDENCE
・汗があると皮膚に密着せず、気化熱により正確に測定できない。
・腋窩皮膚温は、最深部が最も高い。
・麻痺側は血液循環が悪く、温度が低い。
学童:仰臥位の場合
❸腕を体側につけ、体温計を腋窩に密着させて保持する(図4)。測定者は測定側の前腕部を押さえて固定する。
学童:座位の場合
❸測定者が体温計を保持(図5)。患児は測定側の腕を体側につけ、反対側の腕で手首をつかんで固定する。
乳幼児の場合
❸測定者は患児を膝に乗せ、片手で体温計を保持(図6)。もう片方の手で患児の手を抑制する。おもちゃなどであやし、機嫌よく測定できるようにする。
❹電子体温計は終了アラームが鳴ったら取り出して、測定値を確認、記録する。正常範囲は36.0~37.5℃である(図7)。
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直腸検温
❶直腸検温は新生児・低体温児・熱中症、るいそうの著明な患児に適応となる。患児と家族に直腸検温を行うことを説明する。手洗いをし(図8)、必要物品を準備し、消毒済みであるか、破損はないか点検する(図9)。
①体温計
②サック
③手袋
④グリセリン
⑤ガーゼ
⑥ アルコール綿
❷❸体温計をサックに入れる(図10)。
POINT
・サックは先端まで挿入し、先端に角がなく、丸くなっていることを確認する。
❹サックに入れた体温計の挿入部分にグリセリンをつける(図11)。
EVIDENCE
・サックにより、体温計の汚染を防止する。
❺実施者は手袋を装着。体温計を肛門から3cmまで、ゆっくり挿入する(図12)。電子体温計は終了アラームが鳴ったら取り出して、測定値を確認、記録する。
POINT
直腸検温の正常値
・腋窩検温よりも0.8~0.9℃高い。
・口腔検温よりも0.4~0.6℃高い。
POINT
・脊柱と水平に、まっすぐに挿入。
・挿入中は同一体位を保ち、手を離さない。
❻測定後は、体温計を 入れたサックなど廃棄物を片手に持ち、手袋を手首の部分から引き上げる(図13)。
❼そのまま手袋を外す(図14)。
❽手袋は、汚染物を入れた状態で裏返しになる。手袋はできるだけ小さくまとめて捨てる(図15)。
EVIDENCE
・直腸検温に使用した体温計のサックを、裏返しにした手袋内に入れて廃棄することで、感染を防止する。
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本連載は株式会社インターメディカの提供により掲載しています。
単行本に収録されているWeb動画は掲載していません。視聴されたい場合は、単行本をお買い求めください。
[出典] 『新訂第2版 写真でわかる小児看護技術 アドバンス』 監修 山元恵子/編著 佐々木祥子/2022年7月刊行/ インターメディカ