腎疾患と皮膚|全身性疾患と皮膚⑨
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は腎疾患と皮膚について解説します。
秦 まき
沼津市立病院皮膚科
腎疾患と皮膚
慢性腎不全(人工透析)に伴う皮膚病変と、腎疾患を伴う皮膚疾患に分けられる。
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慢性腎不全(人工透析)に伴う皮膚病変(表1)
慢性腎不全の患者では、色素沈着、皮膚の乾燥、瘙痒感、爪の変化などが起こる。
また、人工透析患者では以下のような皮膚病変を生じることがある。
穿孔性皮膚症
四肢に多発する、直径1cmまでの中央に角栓を有する丘疹で、強い瘙痒感を伴う。腎不全や透析に伴う代謝異常産物の皮膚への蓄積や、糖尿病による微小血管障害との関連が示唆されている。
異所性石灰沈着
カルシウム代謝異常に伴う骨の脱灰現象と異所性石灰沈着を生じる。
カルシフィラキシス1)
四肢、躯幹、手指、足趾などに発症する有痛性の紫斑に続く、難治性の皮膚潰瘍を主症状とする疾患である。
皮膚などの細動脈に石灰化を認め、創傷などをきっかけに多発性の微小塞栓を生じ潰瘍が形成されると考えられている。皮膚潰瘍に二次感染を生じ、敗血症を合併することがある。
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腎疾患を伴う皮膚疾患(表2)
結節性硬化症
皮膚、神経系、腎臓、肺、骨などさまざまな臓器に過誤腫を生じる遺伝性疾患である。顔面の血管線維腫は、本疾患に特徴的な皮膚症状の1つである。また多発性、両側性に腎囊胞や腎血管筋脂肪腫を生じる。
腎血管筋脂肪腫は、大きくなると腫瘍内の小動脈が破裂して大量出血したり、正常腎組織を圧迫して慢性腎不全に至ることがある。
ファブリー(Fabry)病
細胞内のライソゾーム内にある分解酵素の1つであるαガラクトシダーゼが先天的に欠損しているため、糖脂質が血管内皮細胞、平滑筋細胞、神経節細胞などに蓄積して諸症状を引き起こす。皮膚の被角血管腫、四肢痛、冷汗症、蛋白尿、心肥大などがみられる。
腎症状は進行すると腎不全を呈する。
アミロイドーシス
アミロイドとよばれる異常蛋白質が全身のさまざまな臓器に沈着し、機能障害を起こす疾患の総称である。原発性アミロイドーシスと多発性骨髄腫に合併するアミロイドーシスの半数以上に皮膚症状がみられ、診断の手がかりになる。
アミロイドが腎糸球体に沈着するとネフローゼ症候群を呈し、進行すると腎不全となる。
膠原病・血管炎
多くの膠原病や血管炎では腎障害をきたし、予後に影響を与えることがある。
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引用・参考文献
1)厚生労働省:難病情報センター、2010(2018年3月26日参照)
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂