デルマドローム|全身性疾患と皮膚①
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回はデルマドロームについて解説します。
八木宏明
静岡県立総合病院皮膚科部長
Minimum Essentials
1内臓などの皮膚外の臓器に生じた何らかの異常、病変が結果的に皮膚の変化として発現したものをデルマドロームと総称する。
デルマドロームとは
内臓などの皮膚外の臓器に生じた何らかの異常、病変が結果的に皮膚の変化として発現することは多い。
古くから「皮膚は内臓の鏡」といわれるが、皮膚科医は皮膚のみを診察、治療するのではなく、皮膚病変からその患者の背後に存在する内臓疾患、神経疾患、精神科疾患、さらには社会的背景などを見出し、それぞれの専門科と連携して総合的に治療にあたるように努力をしている。
内臓病変の皮膚表現はデルマドロームと総称される。デルマ(derm:皮膚)とシンドローム(syndrome:症候群)からなる造語である。内臓の腫瘍に関連したもの、内分泌・代謝疾患(糖尿病、甲状腺疾患など)に関連したもの、消化器疾患(肝臓、消化管など)に関連したもの、免疫不全に関連したもの、循環器疾患に関連したものなどが含まれ、たとえば「足壊疽は糖尿病のデルマドロームである」というような使われ方をする。
もっとも直接的で因果関係のはっきりしているデルマドロームとしては、肝臓疾患などによる皮膚の黄疸(黄色化)や、白血病患者の血小板減少による多発紫斑などがあげられる。実際には透析患者における皮膚瘙痒症などのように因果関係のはっきりしないものも多いが、多くのデルマドロームでは、その原因となった他臓器疾患の治療が成功すると皮膚症状の寛解が期待できる。
逆にいったん寛解した皮膚症状が再燃した場合などは、原疾患の再燃、再発を疑う必要がある。
また、内臓疾患と皮膚症状の対応は一対一ではなく、たとえば糖尿病には皮膚瘙痒症のほかに足壊疽や痒疹、皮膚感染症などのさまざまなデルマドロームが存在する。
逆に痒疹では、糖尿病のみでなく肝臓疾患、腎臓疾患、内臓悪性腫瘍など関連する内臓疾患は多彩である。
皮膚科医は患者の年齢、既往歴などの背景を考慮して、頻度の高いものから順番に類推して原因検索にあたっている。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂