黄色腫|代謝異常症②
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は黄色腫について解説します。
戸田憲一
扇町公園皮膚科クリニック院長
Minimum Essentials
1黄色調の斑、丘疹、結節などの皮疹を呈する。
2高脂血症などの代謝異常を伴う場合がある。
3部位や皮疹の形状により臨床病型がある。中でも眼瞼黄色腫と扁平黄色腫の頻度が高い。
4全身的治療は必要に応じて行う。皮疹の除去には外科的切除あるいは凍結療法などが有効であるが、再発することも多い。
黄色腫とは
定義・概念
黄色を帯びた、斑、丘疹、結節として認められる。機械的刺激を受ける部位に生じやすい。一般に、黄色腫は全身性の脂質代謝異常に伴う場合と、脂質代謝異常を認めない場合に分かれる1)。
手掌線状黄色腫と汎発性扁平黄色腫
手掌線状黄色腫とは扁平黄色腫の1型で、手掌や指のしわに沿って線状に連なる扁平な黄色調の黄色腫である。III型高脂血症に特徴的とされる。
汎発性扁平黄色腫とは黄色腫のうち、扁平黄色腫皮疹が全身性に広範囲に認められる症状を呈するものをいう。必ずしも高脂血症を伴うとは限らない。
原因・病態
通常、高脂血症に伴って出現する。しかし、血清中の脂質に異常のない場合や、脂質以外の代謝異常症の場合に続発して生じることも知られている。
組織的には真皮において、脂質を貪食した組織球(泡沫細胞)が、皮膚真皮内に多数浸潤しているため、皮疹は黄色く見える。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
皮膚症状は、黄色調の、盛り上がりのある丘疹、結節、あるいは盛り上がりのない斑などである。高脂血症を伴うものと伴わないものがある。本症は、形態や皮疹部位により以下のような病型が知られている。
結節性黄色腫
膝、肘、指、足趾などに好発する。直径数mm~数cm大の盛り上がりのある黄色~赤褐色のかたい結節を生じる。高コレステロール血症(IIa、III、V型)に伴う。
腱黄色腫
結節型黄色腫の一種で、アキレス腱や手足膝の腱の肥厚として触知する。腫瘤状、棍棒状を呈し、高コレステロール血症(IIa型)に伴う。
扁平黄色腫
盛り上がりの少ない、黄色調の変化を示す扁平な皮疹である。時に盛り上がりのないこともある。高脂血症を伴うものと伴わないものがある(図1)。
眼瞼黄色腫
日常の診療でもっとも多く遭遇する病型である。扁平隆起性で、上眼瞼の内眼角部に生じる(図2)。多くの患者(約70%)で脂質代謝異常を認めない。
発疹性黄色腫
径数mm以下の小型の黄色調丘疹が全身に多発する。高脂血症を伴うことが多い。
検査
自覚症状に乏しく、黄色調で周囲からやや隆起する結節あるいは平坦な皮疹を、限局ないし汎発性に認めた場合には本症を疑う。
診断は組織学的に、真皮における泡沫細胞の存在を証明することで確定する。さらに、その背景にある多彩な病態を検索し、最終的な診断をつける。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
代謝異常が判明すれば、全身的治療を行う。低脂肪食、低カロリー食、低炭水化物食など、高脂血症の型に合わせた食事制限が重要である。食事指導で不十分であれば薬物療法を併用する。
皮膚症状に対しては手術、レーザー照射、凍結療法、トリクロロ酢酸などによる化学療法など整容的観点からの局所療法を行う。
合併症とその治療法
局所療法の場合、大型の黄色腫などでは除去後に瘢痕形成が目立つこともあるため、十分な説明が必要である。また腫瘤除去後においても、代謝異常合併例では再発する可能性も高いため、高脂血症治療薬投与を継続する。
治療経過・期間の見通しと予後
代謝異常症に伴う場合、長期間にわたり高脂血症治療薬投与を行う。黄色腫自体に危険性はなく、腫瘍に対しては外科的除去治療で終結する。
ただ、正脂血症においても、汎発型扁平黄色腫症例や眼瞼黄色腫症例において、それぞれ血液リンパ系腫瘍の合併や循環器障害発症リスクの上昇という報告もあり、定期的な検診が推奨される。
看護の役割
治療における看護
黄色腫は脂質代謝などの全身的異常を示すサインであることもあり、その検索と治療の必要性を助言する。
規則正しい食生活や適度な運動が大切であることを指導するとともに、薬剤による治療はその効果判定に長期間を要するため、継続的な治療を行えるような精神的支援を行いたい。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂