皮膚アミロイドーシス|代謝異常症①
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は皮膚アミロイドーシスについて解説します。
戸田憲一
扇町公園皮膚科クリニック院長
Minimum Essentials
1アミロイドといわれる線維性蛋白物質が、皮膚を含めたさまざまな臓器に沈着する。多臓器に沈着する全身性アミロイドーシスと、一部臓器に限局する限局性アミロイドーシスがあり、皮膚のみに沈着した場合を皮膚アミロイドーシスという。
2皮膚アミロイドーシスの皮疹は多彩である。
3基礎疾患が明らかな場合はその治療を行うが、これらの治療のみで沈着したアミロイドを除去することは困難な場合が多い。
アミロイドーシスとは
定義・概念
アミロイドといわれる線維状の異常蛋白質が体のいろいろな臓器に沈着し、多彩な機能障害を起こす一連の蛋白代謝異常症候群である。
全身諸臓器に沈着する全身性アミロイドーシスと、特定臓器に限局して沈着する限局性アミロイドーシスに2大別される。本項では主として皮膚アミロイドーシスを中心に概説する。
原因・病態
全身性アミロイドーシスにおけるアミロイド前駆物質の解析は近年急速に進んでおり、30種類以上の病型が知られ、免疫グロブリンL鎖のほか多様な物質が同定されている。しかし、皮膚アミロイドーシスでは前駆物質としてケラチンが想定されているが、沈着機序を含め不明な点が多い。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
皮膚アミロイドーシスでは丘疹、斑、結節、皮膚萎縮、網状、紫斑、水疱あるいは色素脱出など皮疹形状は多彩である。強いかゆみを伴うことが多い。以下のような病型が知られる。
アミロイド苔癬
もっとも多くみられる病型で、中年以降に好発し、褐色調で表面平滑なかたい米粒大の丘疹が散在性に多発、時に集簇する。激しい瘙痒感を伴う。上背部や四肢伸側に多く、触るとザラザラしておろし金様の局面を呈することもある(図1)。
斑状アミロイドーシス
褐色の色素斑で、中年以降の女性の肩甲部や背部にみられ、直径2~3mm大の点状ないし網目状の色素沈着を示す。ナイロンタオルを長期にわたり使用したことで生じる摩擦黒皮症はこの1型とされる。
結節性皮膚アミロイドーシス
単発あるいは多発性のかたい結節で、顔面、体幹、四肢などに生じる。比較的まれな病型である。時に全身性アミロイドーシスに移行することがある。
肛門・仙骨部皮膚アミロイドーシス
肛門や仙骨部に生じる、やや角化した褐色色素斑で、座位による慢性的な刺激が関与すると考えられている。
続発性皮膚限局性アミロイドーシス
何らかの皮膚病変があり、その真皮乳頭層にアミロイド沈着を認める場合をいう。脂漏性角化症、皮膚付属器腫瘍、色素性母斑、皮膚線維腫、基底細胞癌、ボーエン(Bowen)病、慢性単純性苔癬などさまざまな疾患で生じうる。
表皮と接する真皮層表層には多数の細長い突出部がみられ、この部分を真皮乳頭といい、表皮内に食い込んだ真皮部分のことを真皮乳頭層とよぶ。その下に続く真皮と異なり、線維成分はまばらである。細胞、血管、神経などの組織が豊富にみられ、表皮に栄養や酸素を供給する働きがある。
検査
確定診断は、臓器間質におけるアミロイドの沈着を病理組織学的に証明することである。皮膚限局性では、真皮、とくに乳頭部でのアミロイドの検出が決め手となる。全身性にアミロイド沈着が想定される場合は、心電図、心エコー、尿中異常蛋白、末梢神経機能などの諸検査を行う。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
皮膚症状の改善のため、抗ヒスタミン薬の全身投与やステロイド薬の外用療法が行われるが、一般に難治性である。
合併症とその治療
皮膚限局性アミロイドーシスの場合、ステロイド薬の外用療法が長期におよぶ。皮膚萎縮や色素脱失などの副作用が認められた場合は一時休薬を行い、その際、アミロイド沈着による顕著な皮膚症状の再燃に対しては、時に免疫抑制薬の全身投与を行うことがある。
治療経過・期間の見通しと予後
難治であり、症状は長期間持続する。
看護の役割
治療における看護
アミロイドという聞き慣れない名称への患者の理解を助ける。全身性では個々の症状に合わせた看護が求められる。皮膚限局性においては、入浴時にナイロンタオルで強く皮膚をこすると、その刺激で皮膚にアミロイドが沈着する場合があることなどを伝え、生活指導を考慮に入れた看護を心がけたい。
また、長期の継続的かつ規則的な治療が必要であることを患者に理解してもらう。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂