掌蹠膿疱症|炎症性角化症③
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は掌蹠(しょうせき)膿疱症について解説します。
吉池高志
順天堂大学医学部附属静岡病院皮膚科
Minimum Essentials
1膿疱性乾癬の掌蹠限局型である。金属アレルギーや細菌アレルギー、長期喫煙の関与も考慮する。
2掌蹠とくに「土踏まず」や小指球・母指球部に対称性に無菌性膿疱を多発する。
3治療はステロイド薬や活性ビタミンD3外用が第一選択である。そのほか、エトレチナート(チガソン®)内服やPUVA療法を行う。
4慢性に経過し、膿疱が発生と消退を繰り返す。
掌蹠膿疱症とは
定義・概念
手掌・足底に多発性かつ無菌性の膿疱が発生と消退を繰り返す。中年に多く、慢性に経過する。
原因・病態
欧米では、膿疱性乾癬の掌蹠限局型とされている。咽頭炎・齲(う)歯といった病巣感染、つまり細菌アレルギーや歯科金属に対するアレルギー、長期喫煙なども関与している。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
手掌(とくに小指球部や母指球部)、足底(とくに「土踏まず」)に多発する膿疱。これらが慢性の経過で発生と消退を繰り返し、やがて落屑となる(図1)。
図1 掌蹠膿疱症
膿疱は手掌足底を越えて拡大・散布することもある。爪にも点状陥没や爪下の角化をきたす。胸肋鎖骨間骨化症も合併することがあり、当該部の痛みを訴える。
検査
膿疱を培養し、無菌性であることを確認する。金属アレルギーを疑うときはパッチテスト、咽頭の病巣感染が疑われるときは扁桃マッサージ誘発試験が行われる。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
ステロイド薬や活性型ビタミンD3の外用、PUVA療法。エトレチナート(チガソン®)や抗菌薬(テトラサイクリン系、マクロライド系など)の内服、歯科治療、扁桃腺摘出術などを組み合わせる。
合併症とその治療法
強力なステロイド薬を長期外用するため、足白癬を併発しがちである。適宜検鏡したうえで、抗真菌薬治療を行う。
治療経過・期間の見通しと予後
膿疱の発生と消退は慢性経過をたどるが、最終的には寛解・治癒に至ることが多い。
看護の役割
治療における看護
長期喫煙者に対しては禁煙を促す。金属パッチテストや扁桃腺マッサージ誘発試験の結果が陽性だからといって、歯科金属除去や扁桃腺摘出術が必ずしも奏効するとは限らない。十分な説明が必要である。
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本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂