壊死性筋膜炎|細菌感染症⑥

『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は壊死性筋膜炎について解説します。

 

池田政身
高松赤十字病院皮膚科

 

 

Minimum Essentials

1筋膜上にさまざまな起炎菌による感染が生じ、急激に増悪し、水疱や皮膚壊死を生じる。

2急激に進行する疼痛、発赤、腫脹、水疱、皮膚壊死、握雪感(圧すると新雪を握ったような感触)が特徴的である。

3早期に切開、デブリードマンを行い、広域抗菌薬やクリンダマイシンの投与を行う。

4植皮術などの再建術には数ヵ月を要し、適切な治療を行っても20~30%が死に至る。

 

壊死性筋膜炎とは

定義・概念

皮下脂肪織深層から筋膜に沿って広がる重篤な細菌感染症である1)

 

原因・病態

原因菌は黄色ブドウ球菌、溶血性連鎖球菌、大腸菌、ビブリオ・バルニフィカス(vibrio vulnificus)、嫌気性菌などさまざまである。原因菌の経口摂取や、何らかの外傷などから細菌が侵入して感染が成立する。

 

 

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診断へのアプローチ

臨床症状・臨床所見

激痛を伴う浮腫性腫脹、発赤腫脹、水疱、血疱、壊死、潰瘍などの症状(図1)が急速に出現、拡大し、発熱などの全身症状を呈する。

 

図1 下腿の壊死性筋膜炎

下腿の壊死性筋膜炎

 

ショック状態に陥るケースもある。時には筋肉にも感染が拡大し、壊死に陥る。敗血症を併発し、死に至ることも多い。病変部の皮膚を切開すると、筋膜組織が壊死に陥っているため(図2)、筋膜に沿って容易に指を差し込むことができる。

 

図2 病変部の皮膚切開

筋膜組織が壊死している。

病変部の皮膚切開

 

検査

細菌培養、末梢血液像、電解質、肝機能、腎機能、CRP、凝固系検査、血糖値、検尿などの検査を行う。MRIやCT画像検査にて、筋膜および筋肉の病変やガス像を検出する。

 

 

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治療ならびに看護の役割

治療

おもな治療法

早期に外科的デブリードマンを行う。抗菌薬を大量投与(原因菌が不明なときは広域抗菌薬を使用する。原因菌が判明すれば、それらに感受性のある適切な抗菌薬に絞り込む)し、輸液などの対症療法を行う。ショック症状があれば救急対応が求められる。急性期を乗り切れば、植皮などで創の閉鎖を図る2)

 

合併症とその治療法

基礎疾患として糖尿病などが存在することがあるため、その治療も併せて行う。敗血症やショック状態に陥ることがあり、十分な輸液や抗菌薬の大量投与を行う。多くはICUなどで全身管理が必要となる。

 

治療経過・期間の見通しと予後

適切に治療されないと症状が急速に進行し、重篤な状態となり、数日で死に至る可能性が高い。急性期を乗り切れば1~2ヵ月で症状が落ち着くため、創の閉鎖のための手術を行う。

 

看護の役割

治療における看護

症状の推移が急速であるため、全身管理が必要である。発熱、尿量呼吸状態、血圧の変動に注意する。皮疹も急速に増悪するため、経時的に皮疹の状態を観察する。

 

フォローアップ

救命できたとしても醜い瘢痕を残すことが多く、筋肉の壊死を伴う場合は著明な筋力低下などをきたすので、日常生活指導を行う。

 

 

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引用・参考文献

1)伊藤周作:壊死性筋膜炎・ガス壊疽.皮膚科研修ノート(佐藤伸一ほか編),p.400-402,診断と治療社,東京,2016

2)盛山吉弘:壊死性筋膜炎,劇症型溶血性レンサ球菌感染症.逃げない!攻める!皮膚科救急テキスト(出光俊郎編),p.111-116,文光堂,東京,2017


 

本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂

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