蜂窩織炎|細菌感染症⑤
『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』(南江堂)より転載。
今回は蜂窩織炎(ほうかしきえん)について解説します。
池田政身
高松赤十字病院皮膚科
Minimum Essentials
1黄色ブドウ球菌やβ溶血性連鎖球菌による、真皮から皮下脂肪織に至る化膿性の炎症である。
2下肢に好発し、発赤、腫脹、熱感、疼痛がみられる。
3治療は第一世代セフェム系抗菌薬やペニシリン系抗菌薬の全身投与を行う。
41~2週間で軽快し、予後は良好なことが多いが、再発を繰り返すことがある。
蜂窩織炎とは
定義・概念
真皮深層から皮下組織にかけての化膿性の炎症である。
原因・病態
おもな起炎菌は黄色ブドウ球菌やβ溶血性連鎖球菌であり、皮膚の創傷から侵入し、炎症は真皮深層から皮下組織に及ぶ。丹毒より深い部位に感染が生じる1)。
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診断へのアプローチ
臨床症状・臨床所見
下腿に好発し、圧痛を伴う境界やや不明瞭な発赤、腫脹を呈する(図1)。
重症例では発熱を伴うこともある。基礎疾患としてうっ滞性皮膚炎などの静脈うっ滞や糖尿病が存在することもあり、しばしば再発を繰り返す。
検査
病変部からの細菌培養は困難である。末梢血、スクリーニング検査、CRP、血糖値、検尿などの検査を行い、血液培養も行う。
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治療ならびに看護の役割
治療
おもな治療法
ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬内服を行うが、重症例では入院のうえ点滴を行う。効果に乏しい際はニューキノロン系薬やST合剤なども用いる。安静下肢挙上を勧める。
合併症とその治療法
重症例では壊死性筋膜炎などに移行することがあり、注意深く経過を観察する2)。糖尿病や下腿浮腫を伴って生じることがあり、食事療法や下肢の安静、挙上を行う。
治療経過・期間の見通しと予後
7~14日間で軽快するが、再発することがある。重症例では壊死性筋膜炎に至ることがある。
看護の役割
治療における看護
できるだけ局所の安静を保てるように指導する。熱感が強い場合は、水を浸したタオルなどで冷却を行う。病変が下肢の場合は下肢を挙上させる。発熱の有無や皮疹の推移などを観察する。
フォローアップ
再発することが多いので、できるだけ安静を保ち、過激な運動は避けるよう指導する。発赤や痛みが再燃したときは、すみやかに再受診するよう指導する。
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引用・参考文献
1)盛山吉弘:蜂窩織炎,下肢の丹毒.逃げない!攻める!皮膚科救急テキスト(出光俊郎編),p.107-110,文光堂,東京,2017
2)黒川一郎:蜂巣炎,丹毒.日本臨牀 別冊 感染症症候群(第2版)下,p.527-530,日本臨牀社,東京,2013
本連載は株式会社南江堂の提供により掲載しています。
[出典] 『皮膚科エキスパートナーシング 改訂第2版』 編集/瀧川雅浩ほか/2018年4月刊行/ 南江堂