蜂窩織炎とは・・・
蜂窩織炎(ほうかしきえん、cellulitis)とは、真皮から皮下組織の広範囲な急性化膿性炎症疾患で顔面や四肢、特に下肢に多い。局所に境界不明瞭な発赤、腫脹、局所熱感、疼痛が主な症状で発熱、頭痛、悪寒などの全身症状を伴う。蜂巣炎とも呼ばれる。
原因
原因は黄色ブドウ球菌が主体であるが、A群β溶血性レンサ球菌やインフルエンザ菌、大腸菌も原因菌となる。多くは小さな外傷や皮膚潰瘍、足白癬(水虫)といった皮膚バリアの障害から原因菌が皮下組織に侵入して生じるが、明らかな侵入門戸がない場合もある。局所での静脈循環不全やリンパ浮腫も誘因となる。また、血流感染や骨髄炎から二次的に皮下組織に感染が広がり生じることもある。
検査・診断
致死的な疾患である壊死性筋膜炎との鑑別が非常に重要である。ただし、発症早期の壊死性筋膜炎と重症の蜂窩織炎とでは区別がつきにくいため、注意が必要である。適切な培養検体が得られない場合が多いが、病巣部で膿汁が存在すれば菌検出が容易である。血液培養での陽性率は5%未満といわれているが、陽性であったときは原因菌が同定できる。壊死性筋膜炎との鑑別が難しい場合、炎症の範囲やガス産生の有無を調べるためにCT検査を実施することもある。
治療
治療はブドウ球菌をターゲットとした経験的治療〈empiric therapy〉(診断が確定する前に治療を開始すること)が行われ、セフェム系抗菌薬の内服、あるいは点滴が第一選択となる。糖尿病や免疫不全などの基礎疾患がある場合はグラム陰性桿菌や嫌気性菌を想定した抗菌薬が選択される場合もある。初期治療で軽快しない場合やMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)の関与が疑わしい場合はバンコマイシンなどの抗MRSA薬の併用や変更・追加が必要となる。原因菌が同定でき、感受性が判明次第、抗菌薬の見直しを行う。また、局所の安静、下肢の場合は軽度挙上が望ましい。感染の原因となった創傷、浮腫、白癬の治療も並行して行うことで治癒の促進と再発防止が図れる。