胎盤の成長と機能
『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は胎盤の成長と機能について解説します。
立岡和弘
静岡市立清水病院産婦人科長
胎盤とは
胎盤は、胎児と母体の間に介在する臓器で、出生までの期間に胎児の呼吸、代謝、循環、内分泌機能などに関与して、妊娠の維持および胎児の発育に重要な役割を担っている。妊娠15~16週で完成し、妊娠末期にはほぼ円盤状で、重量は500g 前後、直径15~18cm、厚み1.5~2cm である。胎盤重量と胎児体重の比は、ほぼ1:6である。
胎盤の子宮に接する面を母体面(図1)、羊水腔に接する面を胎児面(図2)という。
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胎盤の機能
①胎児の発育としての機能
②ホルモン産生臓器としての機能
③母児間の免疫学的相互機能
これらの機能を有し、胎児の恒常性を維持しながら、母児間の物質交換をつかさどっている。
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胎盤機能検査
胎盤機能は妊娠40週以降、急激に低下する。そのため、胎盤機能検査として、母体血中胎盤性ラクトーゲン(hPL)と胎盤エストリオール(E3)の検査を行う。臨床的意義は、NST やBFP などのリアルタイムで胎児のwell-being を見る検査が優先されるために低くなっている。
①胎盤性ラクトーゲン(hPL)
胎盤の絨毛上皮から産生されるホルモンで、乳汁分泌作用を示すほかに母体血中に放出されて糖や脂肪酸を増加させる。
増加した糖や脂肪酸は胎盤を通過して胎児の栄養源となることから、胎児の発育に関与している。またhPL は胎児への移行はほとんどない。このためにhPL は児体重や胎盤重量とよく相関する。
②胎盤エストリオール(E3)
胎児の副腎で産生されるDHA(dehydro epi androsterone)とDHA-S(DHA-sultate)を原料として胎盤で産生される。
両機能検査とも低値を示した場合、胎盤機能不全が疑われるが確定するものではなく、超音波検査や胎児心拍数モニタリングを参考にして総合的に診断する。
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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版