動脈血ガス分析
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は動脈血ガス分析について解説します。
荒井久美子
新東京病院看護部
〈目次〉
動脈血ガス分析はどんな検査?
血液には、窒素(N2)、酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)などのガスが溶け込んでいます。これらの血液ガス(特にO2やCO2)とpHやHCO3-などを測定することにより、肺や心臓、腎臓などの臓器や体液の状態を知ることができます。動脈血ガス分析(以下、血液ガス分析)は、橈骨動脈などから動脈血を採取し、専用の器機で測定します。
血液ガスは、ガス交換と酸塩基平衡の指標となります(表1)。
CO2分圧やO2分圧などは、動脈血と静脈血でかなり差があるため、呼吸機能の状態を知るためには動脈血によるガス分析が必須となります。ただし、ベースエクセス(BE)や電解質は動脈血と静脈血であまり差がないため、酸塩基平衡の状態だけを知りたいときは、静脈血によるガス分析でも可能です。
表1おもな血液ガスの基準値(成人)
循環器の血液ガスで注意が必要なのが急性循環不全です。循環機能障害が重篤な場合などの症状の1つとして、代謝性アシドーシスがあります。このときの血液ガスデータは、pH・HCO3-の低下をきたします。代謝性アシドーシスをきたした病態を早急に把握し、治療を開始する必要があります
酸塩基平衡の異常のみかた
循環器で血液ガスをみるときに重要なポイントに、酸塩基平衡の異常をみることがあります(表2)。
酸塩基平衡のアセスメントは次の順番で行います。
①pHをみる
pH=7.35未満をアシデミア(酸血症)、pH=7.45以上をアルカレミア(アルカリ血症)といいます。アシデミアとアルカレミアとは、単にpHのみで考えるものです※3。
②pH変化の原因である「CO2」「HCO3-」をみる
pHの原因が何かを「酸であるCO2」「酸を中和するHCO3-」から考えます。
「CO2」が原因で「pH」が変化するものを、呼吸性アシドーシス/呼吸性アルカローシスといいます。
「HCO3-」が原因で「pH」が変化するものを、代謝性アシドーシス/代謝性アルカローシスといいます。
アシドーシスでは、血中のpHを下げようとする病態を考えます※4。pH7.35未満であることが多いですが、7.35以上でもアシドーシスを考慮する場合があります。
アルカローシスでは、血中pHを上げようとする病態を考えます※5。pH7.45以上が多いですが、7.45未満でもアルカローシスを考慮する場合があります。
③pHの変化が内訳と同じであるものを探す
その結果が酸塩基平衡の状態(結論)となります。
- ※1 ベースエクセス(BE)(上へ戻る↑)
excessは過剰という意味で、BEは「塩基過剰」と訳すことが一般的である。塩基である重炭酸イオン(HCO3-)が正常値からどれだけ過剰になっているかを示す指標で、正常値より多い場合は「+」、正常値より少ない場合は「-」と表示する。
- ※3 アシデミア、アルカレミアとアルカローシス(上へ戻る↑)
アシデミアとアルカレミアとは、単にpHのみで考えるものである。アルカローシスは、病態の存在を考えるものである。
文献
- 1)佐藤廣康,橋本敬太郎:心機能に対するpHの効果.心電図 1983;3(2):171-182.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 循環器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社