動脈ラインによる観血的血圧測定

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』（照林社）より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は動脈ラインによる観血的血圧測定について解説します。

高橋鮎美
新東京病院看護部

 

〈目次〉

• 動脈ラインによる観血的血圧測
• 動脈血ラインの測定方法のポイント
• 看護師は何に注意する？
• ビジレオモニターによる循環動態の観察
• ビジレオモニターのパラメーターのアセスメント

 

動脈ラインによる観血的血圧測定

動脈ライン（Aライン）は、循環管理において必要な心拍出量の推測をするのに有用です。持続的に圧波形を確認することができ（図1）、必要時には、患者さんに苦痛を与えることなく血液採取することができます。

図1動脈圧波形のみかた

図(波形)は、道又元裕編:ICUディジーズ クリティカルにおける看護実践 改訂第2版.学研メディカル秀潤社,東京,2015:231.より引用

 

特に、動脈血から得られる血液ガスからは、酸塩基平衡・電解質バランス・代謝反応などの全身状態の把握に必要な情報が得られます。

アプローチ部位には、橈骨動脈、上腕動脈、大腿動脈、足背動脈などがあります（図2）。

図2動脈ラインのおもなアプローチ部位

 

動脈血ラインの測定方法のポイント

必要物品を準備します（表1）。穿刺部に局所麻酔を行い、動脈に針を刺します。外筒（サーフロー）を留置し、専用の耐圧チューブにヘパリンシリンジを接続したものを接続します。逆血確認ができたら、トランスデューサー付きの圧ラインセットと接続します。

表1動脈血ライン測定の必要物品

 

ゼロ点校正（図3）

ゼロ点校正は、測定開始時に血圧測定の基準を決定することで、正確な測定値を得るために重要な手順です。

ゼロ点校正が必要なときは、おもに以下の3つです。
①患者さんが変わったとき
②患者さんの体位が変化し、心臓の高さが変わったとき
③大気開放点の高さを変えたとき

 

図3ゼロ点校正のポイント

 

看護師は何に注意する？

患者さんには観血的血圧測定の必要性の説明をします。患者さんの苦痛の軽減に努めましょう。

正しい動脈圧波形の確認をします。

アラーム設定は血圧変動に迅速な対応ができるように、患者さんの状態に合わせたものにしておきましょう。

アラーム時には、原因検索のためベッドサイドへ行き、患者さんの状態、波形、ライの接続、固定部まで観察するようにしましょう。

ライントラブルを回避するため、固定確認をしましょう。

感染徴候（熱感、発赤、腫脹、疼痛、膿など）の有無を観察するとともに、早期抜去が可能かのアセスメントも重要です。

 

ビジレオモニターによる循環動態の観察

ビジレオモニターでは動脈圧ラインを利用して、動脈カテーテルで測定する血圧波形から得られる情報を詳細に解析し、心拍出量などの各種パラメーターを測定します。

輸液反応性の指標となる、フロートラックシステムを併用することで、循環動態の変化をリアルタイムかつ数値化してとらえることができます（図4）。

図4フロートラックセンサーの例

 

ビジレオモニターのパラメーターのアセスメント

循環血液量が減少傾向にある場合、人工呼吸器下で動脈圧波形の呼吸性変動が大きくなります。この波形の変化率を示したのが1回拍出量変化（SVV）です。

SVV値が10～15％以上で1回拍出量（SV）・心拍出量（CO）値が低下している場合は、循環血液量の不足により、1回拍出量が減少している可能性があります。

SVV値は、動脈圧波形がオーバーシュート／アンダーシュートしていると正確なデータを得ることができないため、注意が必要です。

ビジレオモニターから得られるパラメーターには表2のようなものがあります。

表2ビジレオモニターから得られる各循環動態パラメーターの基準値のめやす

 

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本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

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［出典］ 『本当に大切なことが１冊でわかる 循環器 第2版』 編集／新東京病院看護部／2020年2月刊行／ 照林社