心臓カテーテル検査・治療の基本
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は心臓カテーテル検査・治療の基本について解説します。
湯浅 雪
新東京病院看護部
〈目次〉
心臓カテーテルはどんな検査・治療?
心臓カテーテル検査・治療は、経皮的に手首(橈骨動脈)や肘(上腕動脈)、鼠径部(大腿動脈)などの動脈や静脈から、心臓や血管内へカテーテルを挿入し、X線造影によって形態の観察、血行動態の検査、またその治療を行います(表1)。
心臓カテーテル検査・治療には、動脈から行われる左心カテーテルと、静脈から行われる右心カテーテルがあります。
ほとんどが局所麻酔で行われ、検査は日帰りで行われることもあります。開胸手術に比べ、比較的低侵襲な検査・治療ですが、患者さんは意識のある状態であり、不安や緊張を感じていることも少なくありません。
最近では、より低侵襲の冠動脈CT(CCTA)が普及し、治療後のフォローアップ時などに使用されることも多くあります。しかし、不整脈や息止めが困難な患者さんでは良質な画像が得られず、石灰化が強い病変やステント内も評価困難な場合があり、最終的な診断には心臓カテーテル検査を要する症例もあります。
放射線被曝防護
スタッフは、心臓カテーテル検査・治療中に放射線防護のため、鉛のプロテクターを着用します(図1)。
慢性完全閉塞病変(CTO)治療など長時間に及ぶ検査・治療、肥満の患者さんの場合などは被曝量が多くなります※1。術者やスタッフの被曝への対策とともに、患者さんへの対応も必要となります。
皮膚線量が3Gy(グレイ)以上の場合、発赤や潰瘍などの皮膚障害が起こる可能性があります。照射部位や線量などを医療スタッフ、患者さんへ伝え、注意を促します。手技の1~2週間後に症状が出現することもあり、背部など照射部位の観察を行う必要があります。
血管造影装置の特徴
血管造影装置(アンギオ装置)には、シングルプレーン(図2)※2とバイプレーン※3があります。バイプレーンでは、一度にさまざまな角度から撮影ができます。バイプレーンは造影剤の使用量は減らせますが、被曝量が多くなります。
撮影は、LAO(左側から)、RAO(右側から)、Cranial(頭側から)、Caudal(尾側から)の4方向をさまざまな角度で組み合わせて行います(図3)。
文献
- 1) 山名比呂美:特集 60問トライアル ハートナース検定.ハートナーシング 2016:29(12):40-41.
- 2)循環器用語ハンドブック:僧帽弁閉鎖不全[症].(2020.01.10アクセス)
- 3)日本循環器学会:弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2007年改訂版).(2019.09.01アクセス)
- 4)齋藤滋監修,高橋佐枝子,島袋朋子編:やさしくわかる心臓カテーテル 検査・治療・看護.照林社,東京,2014.
- 5)尾辻豊:心臓弁膜症・心内膜炎.医療情報科学研究所編,病気がみえる vol.2 循環器 第4版,メディックメディア,東京,2017:202-230.
- 6)長沼亨:弁膜症 実地医療で実践すべき診療のプロセス弁膜症 実地医家が知っておくべき現代の弁膜症 経カテーテル僧帽弁逆流症治療MitraClipとは.Medical Practice 2017;34(12):1999-2005.
- 7)高谷陽一,赤木禎治:はやわかり! Amplatzerの実際と必要な看護.ハートナーシング 2015;28(7):710-712.
- 8)日本メドトロニック株式会社:ペースメーカって、何ですか? 2013年12月改訂版.(2019.09.01アクセス)
- 9)吉川糧平,岡村篤徳,南口仁 他:第6章 心臓カテーテル治療.粟田政樹,田中一美編,はじめての心臓カテーテル看護 -カラービジュアルで見てわかる!.メディカ出版,大阪,2013:65-87.
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社