心房中隔欠損症(ASD)
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は心房中隔欠損症(ASD)について解説します。
小野木晃
新東京病院看護部
〈目次〉
心房中隔欠損症はどんな疾患?
心房中隔とは、右心房と左心房を区切る筋肉の壁のことです。心房中隔欠損とは、この壁に欠損(あな)ができている状態です(図1)。
正常では、出生後に心房中隔が閉鎖します。心房中隔欠損症(atrial septal defect;ASD)は、中隔の発達が不十分な場合に生じるもので、欠損部位により、卵円孔開存型、一次孔型、二次孔型、静脈洞型、冠静脈洞型があります。
心房中隔欠損症は、先天性心疾患の約7%を占めます。
患者さんはどんな状態?
心房中隔欠損症の多くは、幼児期・小児期は無症状で経過します。思春期以降になり、労作時呼吸困難・易疲労性などの症状が出てくることがあります。
どんな検査をして診断する?
成人先天性心疾患の評価と管理に、心エコー検査は欠かせません(表1)。経胸壁心エコー法は断層法とドプラ法を用い、形態的診断、血行動態診断、心機能評価を行います。
どんな治療を行う?
外科的治療だけでなく、カテーテルによるASD閉鎖栓を用いた治療も行います(表2)。
※1 アイゼンメンジャー症候群
★1 経皮的心房中隔欠損閉鎖術(ASO)
★2 心不全治療
看護師は何に注意する?
心房細動がある場合、抗凝固療法を行うため、出血傾向に注意します。
食事は、原則として塩分制限が望ましいです。
外科的治療・心臓カテーテル治療を受ける患者さんへは、精神的サポートを欠かさないようにしましょう。
心房中隔欠損症は左→右短絡があり、肺静脈系と動脈系に交通があるため、脳梗塞(奇異性寒栓)になる危険性があります。そのため、点滴を行う際は気泡の混入に注意しましょう。
脳梗塞予防のためにも、深部静脈血栓症(DVT)への注意は必要です。
心房中隔欠損症の看護の経過
心房中隔欠損症の看護を経過ごとにみていきましょう(表3-1、表3-2、表3-3)。
心房中隔欠損症の看護の経過の一覧表はこちら。
表3-2心房中隔欠損症の看護の経過 入院直後・急性期
表3-3心房中隔欠損症の看護の経過 一般病棟・自宅回復(外来)に向けて
[memo]
- ※1 アイゼンメンジャー症候群(上へ戻る↑)
左→右シャントにより、肺血管抵抗が上昇して肺高血圧をきたし、右→左シャントが生じたもの。予後不良である。
文献
- 1)佐藤千史,井上智子編:人体の構造と機能からみた 病態生理ビジュアルマップ[1] 呼吸器疾患,循環器疾患.医学書院,東京,2010:118-119.
- 2)医療情報科学研究編,病気がみえる vol.2 循環器 第4版,メディックメディア,東京,2017.
- 3)吉田俊子,田村富美子,工藤啓:患者の看護.循環器疾患患者の看護,医学書院,東京,2005:330.
- 4)日本循環器学会:成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版).(2019.09.01アクセス)
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社