労作時呼吸困難とは・・・
労作時呼吸困難(ろうさじこきゅうこんなん、exertional dyspnea)とは、安静時には無症状であるが、階段の昇り降りなど日常生活で軽い運動をすることによって呼吸困難感※1が出現する症状である。
※1呼吸困難感:呼吸困難感は、呼吸に伴った不快な感覚の総称である。呼吸困難感の表現はさまざまで、息が途中で吐けなくなる感じ、胸が硬い感じ、胸が締め付けられる感じ、呼吸が重い感じ、いくら呼吸をしても空気が足りない感じなど、個人や原因によって表現する言葉は異なる。
原因
運動負荷を行うと、酸素消費量の増加に伴い換気量が増え、酸素摂取量が増加する。このようにして増加した酸素を組織に供給するため、心拍出量を増やし、酸素運搬能を高めるのが生理学的反応である。しかし、閉塞性換気障害、拘束性換気障害によってガス交換に預かる肺胞換気量の増大が制限されると、運動に見合った肺胞換気量の増加が得られず労作時呼吸困難を来す。
閉塞性換気障害
閉塞性換気障害とは、呼気時に気道が閉塞しているために肺の空気を吐きにくくなっている状態である。スパイロメトリーで、1秒率※2が低下する病態である。
代表的な疾患としては、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、細気管支炎などが挙げられる。
※21秒率:努力性肺活量(最大吸気位から最大限の努力で呼出した気量)のうち1秒間に呼出した気量(1秒量)を%で示した値で、70%以下を閉塞性換気障害という。
拘束性換気障害
拘束性換気障害とは、肺が何らかの原因によって拘束され広がることを制限されている状態である。吸気障害となり肺活量※3が減る病態である。
代表的な疾患としては、肺線維症(間質性肺炎)や肺手術後、胸郭変形、呼吸筋力低下などが挙げられる。
※3肺活量:最大呼気位から最大吸気位までの肺気量で、パーセント肺活量(%VC;被験者の性別、年齢、身長での予測値に対する実測値の%値)が80%以下を拘束性換気障害という。
検査・診断
労作時呼吸困難を来す疾患・病態は多彩である。そのため、患者背景、臨床経過、喫煙歴、既往歴、身体診察やさまざまな検査から総合的に診断する。呼吸器疾患以外でも、労作時呼吸困難を来すことに注意が必要である。
治療
労作時呼吸困難の原因となっている疾患・病態に応じた対処が大切である。閉塞性肺疾患であれば、適切かつ早期の薬物治療と包括的呼吸リハビリテーションなどが有効である。