心室中隔欠損症(VSD)
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は心室中隔欠損症(VSD)について解説します。
小野木晃
新東京病院看護部
〈目次〉
心室中隔欠損症はどんな疾患?
心室中隔とは、右心室と左心室を区切る筋肉の壁のことです。心室中隔欠損とは、この壁に欠損(あな)ができている状態をいいます(図1)。
心室中隔は胎児の発達段階で、心室を左右の2つの部屋に分ける壁としてできてきますが、不十分だと欠損として残ってしまいます。
心室中隔欠損症(ventricular septal defect;VSD)は、先天性心疾患の約20%を占め、最も多いです。
患者さんはどんな状態?
心室中隔欠損の70~75%が自然閉鎖するといわれており、多くは乳児期のうちに閉鎖し、2~3歳以降、閉鎖率は極端に減少します(表1)。思春期以降の自然閉鎖率は6~15%といわれています。
どんな検査をして診断する?
非侵襲的な検査で診断することが可能ですが、臨床的評価で有意な負荷が認められれば、手術適応決定のために心臓カテーテル検査を行うこともあります(表2)。
※1 拡張期ランブル
どんな治療を行う?
肺高血圧を伴う心室中隔欠損の場合は、乳児期早期の外科治療が原則となります。
看護師は何に注意する?
外科治療の適応がない心室中隔欠損でも、患者さん・家族へは細菌性心内膜炎の予防の必要性を説明します。
気道感染を繰り返し起こしやすく、重症化しやすいため、感染予防に努めるよう説明します。
心室中隔欠損症の看護の経過
心不全急性期の看護を経過ごとにみていきましょう(表3-1、表3-2、表3-3)。
心不全の看護の経過の一覧表はこちら。
[memo]
- ※1 拡張期ランブル(上へ戻る↑)
拡張期において心室急速充満期に生じる低調な雑音。ゴロゴロ・ガラガラと聴取される。輪転様雑音・遠雷様雑音とも呼ばれる。
文献
- 1)佐藤千史,井上智子編:人体の構造と機能からみた 病態生理ビジュアルマップ[1] 呼吸器疾患,循環器疾患.医学書院,東京,2010:118-119.
- 2)医療情報科学研究編,病気がみえる vol.2 循環器 第4版,メディックメディア,東京,2017.
- 3)吉田俊子,田村富美子,工藤啓:患者の看護.循環器疾患患者の看護,医学書院,東京,2005:330.
- 4)日本循環器学会:成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版).(2019.09.01アクセス)
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社