成人の先天性心疾患

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は成人の先天性心疾患について解説します。

 

小野木晃
新東京病院看護部

 

先天性心疾患はどんな疾患?

先天性心疾患は、出生時に存在する心臓の奇形により、心機能に異常をきたすものです(図1)。

 

図1先天性心疾患の一例1)

先天性心疾患の一例

 

先天性心疾患の発生頻度は、全生産児の約1%、毎年1万人程度とされています。成人の先天性心疾患の患者数は、小児の先天性心疾患の患者数と同程度となってきており、約50万人といわれています。

 

先天性心疾患の多くは乳幼児期に診断され、小児期にかけて治療が行われますが、比較的予後がよいです。しかし、乳幼児期に見逃され、成人期に症状が発生してみつかる場合もあります。心臓の奇形の発生原因は、発育停止説、感染説、遺伝説など種々考えられていますが、まだ完全には究明されていません。

 

先天性心疾患を短絡の有無で分けると、図2のようになります。

 

図2先天性心疾患の短絡の有無での分類方法

先天性心疾患の短絡の有無での分類方法

 

★1 心房中隔欠損症(ASD)
★2 心室中隔欠損症(VSD)
※1 短絡(シャント)
短絡血流のこと。血流は圧の高いほうから低いほうに短絡する。短絡血流を受けた側では血流量が増加し、負担が増す。
※2 ファロー四徴症
動脈狭窄、心室中隔欠損、大動脈騎乗、右室肥大の4つが起こる先天性心疾患。
※3 房室中隔欠損症(AVSD)
心房と心室の中隔のつなぎ目が欠損し、肺から返った血液の一部が再び肺に戻る疾患。動脈管開存症(PDA)胎児の大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が、出生後も閉じない先天性心疾患。
※4 動脈管開存症(PDA)
胎児の大動脈と肺動脈をつなぐ動脈管が、出生後も閉じない先天性心疾患。
※5 肺動脈弁狭窄症(PS)
肺動脈の弁あるいはその前後が狭くなっている先天性疾患。

 

 

 


文献

  • 1)佐藤千史,井上智子編:人体の構造と機能からみた 病態生理ビジュアルマップ[1] 呼吸器疾患,循環器疾患.医学書院,東京,2010:118-119.
  • 2)医療情報科学研究編,病気がみえる vol.2 循環器 第4版,メディックメディア,東京,2017.
  • 3)吉田俊子,田村富美子,工藤啓:患者の看護.循環器疾患患者の看護,医学書院,東京,2005:330.
  • 4)日本循環器学会:成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版).(2019.09.01アクセス)

 


本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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