感染性心内膜炎(IE)

『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は感染性心内膜炎(IE)について解説します。

 

笹野香織
新東京病院看護部

 

〈目次〉

 

 

感染性心内膜炎(IE)はどんな疾患?

感染性心内膜炎(infectious endocarditis;IE)とは、弁膜や心内膜、大血管内膜に細菌集落を含む疣腫(ゆうしゅ・vegetation[ベジテーション])を形成し、菌血症、血管閉塞、心障害などの多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患です(図1)。

 

図1感染性心内膜炎のしくみ

感染性心内膜炎のしくみ

 

疣腫はフィブリン血小板が固まったなかに菌が定着したもので、一部が心内膜から剝がれ、各臓器に流れている血管に詰まると塞栓症を起こすことがあるといわれます。

 

加療しても入院中の死亡率は15~30%と高いことが知られています。

 

合併症として最も多くみられるのが心不全です。左心系自己弁感染性心内膜炎の約半数に合併症として生じます。

 

塞栓を合併するケースは、感染性心内膜炎において20~40%といわれています。

 

動脈塞栓症による急性心筋梗塞や脾梗塞、腎梗塞、腸管動脈への塞栓で発症する虚血腸炎など、さまざまな合併症があります。

 

血栓が末梢血管を塞栓させると、さまざまな皮膚症状が出現します(図2)。

 

図2特徴的な皮膚症状

特徴的な皮膚症状

 

 

 

患者さんはどんな状態?

感染をきたしているため、38℃ 以上の発熱、それに伴う悪寒シバリング倦怠感食欲不振が生じます。

 

80~85%で心雑音が聴取されます。

 

眼瞼結膜、峡部粘膜、四肢に点状出血がみられます(図2)。

 

血液検査では炎症反応が上昇します。

 

症状が悪化すると敗血症になり血圧低下頻脈意識レベルの低下などの症状が出てきます。

 

疣腫により弁破壊を起こしているときには心不全症状が出てきます。

 

疣腫により、脳塞栓症を起こしているときには、麻痺や意識レベルの低下がみられます。

 

 

 

どんな検査をして診断する?

修正Duke(デューク)診断基準を使って診断することが多いです。血液培養検査で持続的に菌の検出がある、心エコーで、
①弁あるいはその支持組織の上、逆流ジェット通路、または人工物に付着する可動性腫瘤(疣腫)
②弁周囲膿瘍
③人工弁の新たな部分的裂開
④新規の弁閉鎖不全
のいずれかを認めれば大基準を1つ満たしたことになります。

 

食道エコー検査を行うと、心エコー検査よりも精密に疣腫がみられるため、診断がより正確になります。

 

 

 

どんな治療を行う?

血液培養の結果から、検出された原因菌に効果のある抗菌薬の投与を長期間行います。抗菌薬を投与して48~72時間後と1週間後に効果判定を行います。

 

可能な薬剤に対しては血中濃度を測定し、適切な量の投与を行います。

 

定期的に心エコーやCTをとり、疣腫の有無や弁破壊が起こっていないかを評価します。内科的治療が有効でない場合は手術を考慮します。

 

コントロール困難な感染、うっ血性心不全、塞栓症の大きな可能性またはその既往が手術の対象となります。

 

 

 

看護師は何に注意する?

心不全敗血症の症状が出ていないかの注意深い観察が必要です。

 

発熱に対し、解熱剤の投与やクーリングを行います。

 

発熱に伴い、食欲不振があれば食べやすいものへ食事内容を変更することや、点滴の投与も医師へ検討してもらいます。

 

ゆっくり安静にできるように、環境の調整も大切です。

 

脳梗塞症状(麻痺、意識レベル低下、ろれつ障害など)の有無や虚血性腸炎の症状(腹痛、血便など)の有無も観察が必要です。

 

 

 

感染性心内膜炎(IE)の看護の経過

感染性心内膜炎(IE)の看護を経過ごとにみていきましょう(表1-1表1-2表1-3)。
看護の経過の一覧表はこちら

 

表1-1感染性心内膜炎(IE)の看護 発症から入院・診断

感染性心内膜炎(IE)の看護 発症から入院・診断

 

表1-2感染性心内膜炎(IE)の看護 入院直後・急性期

感染性心内膜炎(IE)の看護 入院直後・急性期

 

表1-3感染性心内膜炎(IE)の看護 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

感染性心内膜炎(IE)の看護 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて

 

表1感染性心内膜炎(IE)の看護の経過

 

※横にスクロールしてご覧ください。

 

感染性心内膜炎(IE)の看護の経過 一覧表

 


文献

 


本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社

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