心タンポナーデ
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『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は心タンポナーデについて解説します。
笹野香織
新東京病院看護部
〈目次〉
心タンポナーデはどんな状態?
心タンポナーデとは、何らかの原因で心膜腔に心囊液や血液がたまり、心膜腔内圧が上昇して心室の拡張が妨げられている状態のことです(図1)。
拡張期に血液をため込めないため、心拍出量が低下し、低血圧ショックや死に至る場合もあります。
心囊液が緩徐に貯留した場合は、1,500~2,000mLまではタンポナーデ症状が出ないことがあります。
急速に心囊液が貯留した場合には少量(例:150mL)であっても、心膜がそれに適応できるだけ伸展することができないため、心タンポナーデを起こします。
心囊液が貯留するスピードが重要であり、心囊液の量で重症度は決まりません。
心タンポナーデを起こす原因はさまざまです(表1)。
患者さんはどんな状態?
心囊水で心臓の拡張が障害されるため、血圧の低下が起こります。また、血圧の低下を補うために頻脈となります。
心電図では低電位がみられます。QRS波が1拍ごとに大小の波形になる電気的交互脈がみられます。
心囊水があるため、心音は減弱します。
症状が急激に進むと循環動態が保てずショック状態に陥ります。
どんな検査をして診断する?
心エコー検査で心囊液の貯留の有無を検査します(表2)。
どんな治療を行う?
血圧低下やショック症状がある場合は、ただちに心囊穿刺や外科的ドレナージ(心嚢ドレナージ、図2)を行い、減圧することが必要です。心囊水を除去できれば血圧は上昇します。
看護師は何に注意する?
心囊液貯留で入院した患者さんでは、バイタルサインの変動に注意します。血圧の低下や頻脈が出現したら、ただちに医師へ報告します。
心囊穿刺を行った後でも、心囊水が再度たまってきたら血圧低下や頻脈が生じるため、バイタルサインに注意します。
心囊ドレーンが挿入されている場合、排液量や性状を観察します。また、ドレーンの挿入の長さがずれていないか、刺入部の感染徴候や出血・浸出液の有無の観察をします。
ドレーンを抜去する前にはドレーンをクランプし、心囊水がたまらないか確認します。そのため、クランプ中の血圧の低下に注意します。医師が心エコーで心囊水の貯留がないことを確認し、心囊ドレーン抜去となります。
文献
- 1)甲田英一監修:Super Select Nursing 循環器疾患 疾患の理解と看護計画.学研メディカル秀潤社,東京,2011.
- 2)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.
- 3)日本循環器学会:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版).(2019.09.01アクセス)
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 循環器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社