慢性収縮性心膜炎
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は慢性収縮性心膜炎について解説します。
笹野香織
新東京病院看護部
〈目次〉
慢性収縮性心膜炎はどんな疾患?
慢性収縮性心膜炎とは、壁側心膜・臓壁心膜に線維性肥厚や石灰化が起こり、心膜が硬化・収縮することで心臓の拡張障害を起こしている状態です(図1)。
通常は、急性心膜炎発症の数か月~数年後に発症します。また、腎不全などの慢性疾患によって線維化変化が促進されて起こります。
かつては結核患者に発症することが多かったのですが、抗結核薬の発達により、結核の罹患率が低下してきているため、現在では減少傾向にあります。
現在では、開胸術後の慢性収縮性心膜炎も多くみられる病態です。
患者さんはどんな状態?
心室の拡張障害が起こるため、おもに右心不全症状がみられます。労作時の呼吸困難や易疲労感、頸静脈怒張や浮腫、腹水貯留、肝うっ血を認めます(表1)。
どんな検査をして診断する?
胸部X線撮影やCT、心エコー検査を行い、石灰化や肥厚の有無を観察します(表2)。
どんな治療を行う?
外科的治療(心膜剝離術)が唯一の治療法です。心膜剝離術により、90%程度で症状の改善が認められています。ただし再発することが多いといわれています。
症状が進行するほど手術は困難になり、術後の経過も不良となるため、早期に心膜剝離術を行う必要があります。軽度の心不全症状が出ているときには、利尿薬の投与や塩分制限などを指導します。
看護師は何に注意する?
術前の血圧、脈拍、不整脈の有無、呼吸症状などの観察を行い、異常時には医師へ報告します。
心不全症状が出ているときには、呼吸困難や胸部不快感を緩和します。
精神的不安があるため、患者さんの訴えを傾聴します。
慢性収縮性心膜炎の看護の経過
慢性収縮性心膜炎の看護を経過ごとにみていきましょう(表3-1、表3-2、表3-3)。
看護の経過の一覧表はこちら。
表3-2慢性収縮性心膜炎の看護 入院直後・急性期
★1 心不全急性期の看護(近日公開)
表3-3慢性収縮性心膜炎の看護 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて
★1 心不全急性期の看護(近日公開)
文献
- 1)甲田英一監修:Super Select Nursing 循環器疾患 疾患の理解と看護計画.学研メディカル秀潤社,東京,2011.
- 2)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.
- 3)日本循環器学会:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版).(2019.09.01アクセス)
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 循環器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社