急性心膜炎
『本当に大切なことが1冊でわかる循環器』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は急性心膜炎について解説します。
笹野香織
新東京病院看護部
〈目次〉
急性心膜炎はどんな疾患?
急性心膜炎は、心膜に急に炎症を起こしている状態です。
急性心膜炎の90%は原因不明であり、特発性心膜炎と呼ばれます(表1)。しかし、その多くはウイルスによるものと考えられています。
特発性心膜炎患者の15~25%は、症状が数か月または数年にわたって間欠的に再発します。
表1急性心膜炎のおもな原因(ウイルス以外)
患者さんはどんな状態?
急性心膜炎では、風邪に似た症状に胸痛を伴います(表2)。
どんな検査をして診断する?
胸痛や呼吸困難などを主訴に受診するため、心筋梗塞や狭心症との鑑別が必要です。12誘導心電図や心エコー検査を行い、診断します(表3)。
どんな治療を行う?
ウイルスに対する根本的な治療はないため、基本的に入院して安静を保つことが治療となります。
胸痛や発熱に対しては、鎮痛薬や解熱薬の投与を行い、症状を緩和します。
心タンポナーデを合併した場合は、心囊ドレナージを行う必要があります。
原因がわかるものには、それぞれの対症療法を行います(表4)。
看護師は何に注意する?
安静ができるように環境を整えたり、胸痛や発熱に対して投薬を行います(表5)。
心囊液が急激にたまると心タンポナーデになるため、バイタルサインに注意します。血圧低下や頻脈がみられたらすぐに医師へ報告します。
患者さんが胸痛を訴えたときに、その胸痛が心膜炎によるものなのか、心筋梗塞や狭心症によるものなのかを判断し、医師へ報告することも大切です。どちらによる胸痛かによって、緊急性が違ってくるためです。
★1 どんな検査をして診断する?
急性心膜炎の看護の経過
急性心膜炎の看護を経過ごとにみていきましょう(表6-1、表6-2、表6-3)。
看護の経過の一覧表はこちら。
表6-2急性心膜炎の看護 入院直後・急性期
表6-3急性心膜炎の看護 一般病棟・自宅療養(外来)に向けて
文献
- 1)甲田英一監修:Super Select Nursing 循環器疾患 疾患の理解と看護計画.学研メディカル秀潤社,東京,2011.
- 2)医療情報科学研究所編:病気がみえる vol.2 循環器 第4版.メディックメディア,東京,2017.
- 3)日本循環器学会:感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版).(2019.09.01アクセス)
本連載は株式会社照林社の提供により掲載しています。
書籍「本当に大切なことが1冊でわかる 循環器」のより詳しい特徴、おすすめポイントはこちら。
[出典] 『本当に大切なことが1冊でわかる 循環器 第2版』 編集/新東京病院看護部/2020年2月刊行/ 照林社