“攻撃性のある”認知症者にどう対応する?
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『エキスパートナース』2016年7月号より転載。
“攻撃性のある”認知症者への対応について解説します。
桑原良子
聖路加国際大学大学院看護学研究科老年看護学助教
① なぜ“攻撃的”になっているのかを考える
認知症は時間とともに病状が進行していきます。脳の機能が低下することにより、今まで経験した記憶を思い起こすことに時間がかかります。このような状況は、日々の暮らしのなかにある小さな判断にも迷うことになります。
認知症の人の「攻撃性」はなぜ起きるのかを図1に示します。
認知症の人は、周囲の人に行動を焦らされると判断に迷い、不安になりやすく混乱します。BPSD(認知症による行動・心理症状)は、認知症の人によく起きます。BPSDのなかには、対応が困難と言われる「攻撃性」があります。
認知症の人は、自身のつらく感じる症状を的確な言葉で表現することが難しく、感情的な反応を示すこともあります。まず医療者は、身体のどこかに「感染症」「脱水」、あるいは「便秘」等の異変がないか確認します。
ほかには、看護師がおむつ交換、あるいは口腔ケア等をするときに、大声で怒鳴ったり、蹴ったり、つねったりといった暴力行為を示すこともあります。
認知症の人に不安や混乱をきたす環境は、看護師のアセスメント力によって左右されます。医療者を含めた周囲の方の配慮や対応によって、認知症の人の攻撃性がなくなることもあります。
[事例]“攻撃性”のある認知症者への対応を考える
下記に事例を示します。
- Aさん・80代、男性
- 誤嚥性肺炎のため呼吸不全になったアルツハイマー型認知症、FAST分類5(中等度認知症)
- 看護師は、誤嚥性肺炎予防のため口腔ケアは大切なケアと認識しており、Aさんには「肺炎にならないために、口をきれいにしましょう」と説明していた。しかしAさんは、看護師に手を上げていた
1Aさんはなぜ“攻撃的”になっている?
- 看護師はAさんにケアの説明をしているが、Aさんにとっては、「これから歯磨きをする」と認識する前に、突然、何か(歯ブラシ)を口の中に入れられた状況だった
- Aさんは、何をされるのかわからない恐怖があり、手を上げることにより、「不快」であることを表出していた
2“攻撃性”のあるAさんへの対応
- 歯磨きの方法を理解することができるように、歯を磨く導入部分について、看護師が部分介助する。
- このように“何をするのか”行動の導入部分を示し、認知症の人の行動を待つと、自然に何をどのようにするのか方法がわかり、自分で歯を磨くことができるときもある。
②“攻撃性”のある認知症者への対応をチームで考える
攻撃性のある言葉や行動は、認知症の人の家族介護者の精神的な負担につながります。
看護職の限られた情報だけではなく、多職種チームの持っている多面的な情報を共有し、認知症の人はどのような要因により攻撃的になっているのか、その原因をチームで検討します。
いつもの慣れ親しんだ自宅(施設等)と入院環境は異なるため、認知症の人は、入院環境に慣れることに時間がかかります。そのため、入院直後から数日は特に混乱しやすく、夜間せん妄になりやすいと言われています。夜間せん妄の1つには「攻撃性」があります。
認知症の人へのケアマネジメントは、認知症の人とその家族、多職種チームにおいて医学的判断と特性を踏まえ、認知症の人の治療・ケアのエンドポイントを何にするのか検討することが肝要です。
[参考文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。/著作権所有(C)2016照林社
P.50~51「“攻撃性のある”認知症者にどう対応する?」
[出典] 『エキスパートナース』 2016年7月号/ 照林社