HFOV(高頻度振動換気法)中の看護上の注意点は?
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「HFOV中の看護上の注意点」に関するQ&Aです。
三浦規雅
東京都立小児総合医療センターPICU主任
HFOV(高頻度振動換気法)中の看護上の注意点は?
高い胸腔内圧による循環器系・神経系障害や、重くて固い呼吸器回路による弊害に留意する必要があります。
〈目次〉
体位の管理
1頭位挙上の維持
HFOVの特徴は、CMVに比べて持続的に高い気道内圧がかかることである。したがって、胸腔内圧上昇による静脈還流障害から頭蓋内圧亢進をきたす恐れがあるため、頭位挙上として静脈還流の改善を図るとともに、頭蓋内圧亢進所見に注意する。
頭位挙上は、横隔膜を下げ、肺容量の改善にもつながる。肺容量の改善には、胃管のビューロー式減圧による腹部減圧も有効である(図1)。
2回路の固定・取り回し
HFOVの呼吸器回路は、回路内での振動の減衰を抑えるために、CMVの呼吸器回路に比べて固く重い。
したがって、気管チューブが屈曲しやすく、固定がゆるみやすく、気管チューブの位置のずれが生じやすいため、呼吸器回路の固定や取り回しに工夫を要する(図2)。
3体位変換
HFOV施行中も体位変換は可能であるが、回路の特性上、ある程度の制約は生じる。
HFOV施行中の褥瘡好発部位は、後頭部、側頭部、耳介部、後頸部、肩甲骨部である。体圧分散寝具や皮膚保護材などを用いて、褥瘡予防を図る(図3)。
体位変換は、安全に配慮して複数名で行い、体位変換後は胸部の振動状態やSpO2から呼吸状態を評価し、必要であればSIをかけて、肺胞の再拡張を図る。
バイタルサイン測定法
HFOV施行中は、心音を聴取することがしばしば困難となるため、必要であれば手動式換気中に聴取する。脈は、触知またはドップラーにて聴取することができる。
HFOV施行中は、上肢による血圧測定は不安定で、高く測定されることもある。その場合には、下肢での測定が安定している。
HFOV施行中は、静脈還流障害から心拍出量の減少が生じる。特に、SIをかける場合は血圧低下が顕著であるためモニタリングしながら行い、状況に応じてSIをかける秒数も調整する必要がある。
[文献]
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社