オーラルケアの方法は?どれくらいの頻度で行うの?|人工呼吸ケア

『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。

 

今回は「オーラルケアの方法」に関するQ&Aです。

 

露木菜緒
一般社団法人Critical Care Research Institute(CCRI)

 

オーラルケアの方法は?どれくらいの頻度で行うの?

 

確実なブラッシングによる垢や舌苔の除去、保湿剤の使用による口内乾燥の防止を、少なくとも1日1回行います。オーラルケアは、早期から継続して行うことが重要です。

 

〈目次〉

 

オーラルケアの施行間隔

オーラルケアの回数は、細菌数が繁殖するといわれる4時間間隔で実施するのが理想だが、実際には、口腔の観察ツール(ROAG)(表1)に沿って機能障害の程度を評価し、回数を設定する(機能障害の程度が高くなるほどケア回数を増やしていく)。ROAGは簡便で客観的評価が可能である。

 

表1口腔の観察ツール(ROAG:revised oral assessment guide)

 

カテゴリー 1度 2度 3度
正常 低いorかすれた 会話しづらいor痛い
嚥下 正常な嚥下 痛いor嚥下しにくい 嚥下不能
口唇 平滑でピンク 乾燥or亀裂and/or口角炎 潰瘍or出血
歯・義歯 きれい、食物残渣なし
  1. 部分的に歯垢や食物残渣
  2. むし歯や義歯の損傷
全般的に歯垢や食物残渣
粘膜 ピンクで、潤いあり 乾燥and/or赤、紫や白色への変化 著しい発赤or厚い白苔、出血の有無にかかわらず水疱や潰瘍
歯肉 ピンクで引き締まっている 浮腫性and/or発赤 手で圧迫しても容易に出血
ピンクで、潤いがあり乳頭がある 乾燥、乳頭の消失、赤や白色への変化 非常に厚い白苔、水疱や潰瘍
唾液(口腔乾燥) ミラーと粘膜の間に抵抗なし 抵抗が少し増すが、ミラーが粘膜にくっつきそうにはならない 抵抗が明らかに増し、ミラーが粘膜にくっつく、あるいはくっつきそうになる
Andersson P, Hallberg IR, Renvert S. Inter-ratar reliability of an oral assessment guide for elderly patients residing in a rehabilitation ward. Spec Care Dentist 2002;22:181-186.
岸本裕充,塚本敦美:口腔ケアのアセスメントおよびケア方法概論(1)口腔のアセスメント.8020推進財団編,入院患者に対するオーラルマネジメント,8020推進財団,東京,2008:12.より転載

 

少なくとも1日1回は、歯垢や舌苔を除去できるような徹底したケアが重要である。

 

オーラルケアの手順

1観察

口腔の観察(表1)を行う。口唇や口腔が乾燥していたら、先に潤滑剤を塗布する。

 

2体位の調整

頸部を前屈し、側臥位で顔を横に向けた誤嚥予防の体位とする。

 

麻痺がある場合は健側を下にし、姿勢が傾かないよう麻痺側にクッションなどを置く。

 

挙上角度は30度以下とする(30度以上では気管と食道の位置関係が誤嚥しやすい状態となるため)。

 

3カフ圧の調整

カフ圧を30cmHO程度へ調節する。「オーラルケア前にカフ圧を40cmHO程度へ上昇させる」と書かれている文献もあるが、以下の理由から、カフ圧は上限圧でよいと考える。

 

  1. カフ圧を上げても垂れ込みを完全に防ぐことはできない。
  2. カフ上部吸引がついていないチューブでは、一時的にカフ圧を上げてカフ上部に洗浄水をためても、吸引除去する術がない。
  3. カフ上部吸引がついているチューブであっても、適正圧への戻し忘れや、脆弱な気管壁への侵襲などのリスクがある。

 

4開口・視野の拡大(図1

図1口腔粘膜と舌苔のケア

 

バイトブロックやオーラルワイダー(口角鉤)などを用いて開口し、視野を広くする。

 

5ブラッシング(図2

図2ブラッシングのポイント

 

歯垢は、歯ブラシを使って物理的に破壊しないと除去できない。

 

歯と歯の間、歯と歯茎の間、気管チューブの裏側など、汚れが残存しやすいところを意識的にブラッシングする。

 

6口腔粘膜と舌苔のケア(図3

図3口腔粘膜と舌苔のケア

 

口蓋・歯肉・頬の裏・気管チューブ周囲をスポンジブラシで清拭する(図3-a)。

 

スポンジブラシにねばつきや汚れが付着したら、そのつど、ティッシュペーパーや未滅菌ガーゼなどでスポンジブラシの汚れを拭き取る(図3-b)。汚れがスポンジに付着したままでは効率よく清拭できないためである。

 

舌苔は、軽くこすって剥がれてくるものだけを除去する。一度に全部取ろうとせず、保湿とスポンジブラシでの清拭を繰り返すのがポイントである。

 

7洗浄

洗浄時は、洗浄する水量は減らし、顔を横に向けて頬部に洗浄液をため、排唾管で確実に吸引する(図4)。

 

図4洗浄

 

洗浄液は、汚れ(歯など)に直接かけ、間違っても咽頭に向かってかけてはいけない。

 

誤嚥のリスクが高い場合、手技が不慣れな場合には、洗浄はしない。

 

8保湿

乾燥を予防するため、口腔(口蓋・舌・口腔粘膜)に保湿剤を塗布する。

 

口唇にも、ワセリンやリップクリームを塗布する。

 


[文献]

  • (1)岸本裕充,曽我賢彦:診療報酬に、なぜ「周術期口腔機能管理」が取り上げられたの?エキスパートナース2012;28:28-31.
  • (2)岸本裕充:知っておきたい!急性期の口腔ケア.オーラルケア,東京,2008:102-103.
  • (3)説ICU呼吸管理編,真興交易医書出版部,東京,1996:310-313.
  • (4)厚生労働省:平成26年度診療報酬改定の概要(歯科診療報酬):26.(2014年11月18日閲覧).
  • (5)岸本裕充,塚本敦美:口腔ケアのアセスメントおよびケア方法概論(1)口腔のアセスメント.8020推進財団編,入院患者に対するオーラルマネジメント,8020推進財団,東京,2008:12.

 


本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。

 

著作権について

 

[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社

SNSシェア

看護ケアトップへ