NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)の適応は?|人工呼吸ケア
『人工呼吸ケアのすべてがわかる本』(照林社)より転載、Web掲載にあたり一部改変。
内容は書籍刊行当時のもの。
今回は「NPPVの適応」に関するQ&Aです。
濱本実也
公立陶生病院集中治療室師長
NPPVの適応は?
一般的に、患者が協力的で、マスクの装着が可能であり、気道が確保され、循環動態が安定していれば、適応と考えます。
〈目次〉
NPPVの適応と禁忌
NPPVの一般的な「適応」と、「適応注意」または「禁忌」とされる要因を表1にまとめる。
適応と適応注意・禁忌の項目は、おおむね対比している。
導入時だけでなく継続的に観察し、NPPVの中止や気管挿管による人工呼吸管理への移行を評価する。
1NPPVの適応
NPPVはマスクで換気を行うため、マスクの装着と送気が可能であることが最低条件となる。
NPPV実施にあたっては、以下の項目を満たす必要がある。
①意識があり協力的であること
②マスクがフィットしないほどの顔面の外傷や変形がないこと
③気道が確保されていること
なお、「意識レベルが悪い」「不隠」など、上記①を満たせない状況が、CO2ナルコーシスや低酸素、呼吸困難などに起因する場合は、NPPVで換気することによって意識が回復し、患者が協力的になることもあるため、適応となる。
2NPPVの適応注意・禁忌
NPPV装着時には、持続的な陽圧による静脈還流量の低下などによって循環が抑制されるため、循環動態が著しく不安定な患者に対しては適応注意または禁忌となる。
痰が多く、かつ排痰が著しく困難な患者は、痰の貯留による無気肺や気道閉塞の可能性があり、NPPVの適応注意または禁忌とされる。嘔吐や嘔吐のリスク(アクティブな消化管出血、イレウスなど)がある患者も同様である。
気胸がある場合は、ドレナージ後にNPPVを使用することが可能である。
疾患別・NPPVの適応
NPPVの適応となる主な疾患について表2にまとめる。
NPPVのエビデンスレベルや推奨度は、疾患によって異なる。ガイドラインでNPPVを強く推奨されているのは、COPD(慢性閉塞性肺疾患)急性増悪と心原性肺水腫である。
NPPVは、施設の教育やスタッフの習熟度に比例して成績が向上する(1)ため、同じ疾患であっても医療スタッフの技術の習熟度によってNPPVの推奨度が異なる。
1COPD急性増悪
COPDの急性増悪に対しては、GOLD(ゴールド/慢性閉塞性肺疾患のためのグローバルイニシアティブ)においてもNPPVの最もよい適応とされている。
NPPVを使用することで、「気管挿管の回避」「気管挿管による肺炎などの感染症の減少」「死亡率の減少」などのアウトカムが示されている。
2心原性肺水腫
心原性肺水腫による呼吸不全に対しては、PEEPによる平均気道内圧の上昇や虚脱肺の換気の改善、呼吸仕事量の減少や左室後負荷の減少による血行動態への(有益な)影響などの効果が期待できる。
日本循環器学会の『急性心不全治療ガイドライン(2011年改訂版)』においても、酸素投与が無効な場合のNPPVが推奨(レベルA)されている。
略語
- COPD(chronic obstructive pulmonary disease):慢性閉塞性肺疾患
- GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease):慢性閉塞性肺疾患のためのグローバルイニシ アティブ
- PEEP(positive end expiratory pressure ventilation):呼気終末陽圧換気
[文献]
- (1)Chevrolet JC, Jolliet P. Workload of Non-Invasive Ventilation in Acute Respiratory Failure. In: Vincent JL ed. Year book of intensive and emergency medicine 1977. Berlin: Springer-Verlag; 1997: 505-513.
- (2)日本呼吸器学会NPPVガイドライン作成委員会 編:NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)ガイドライン. 南江堂,東京,2006.
本記事は株式会社照林社の提供により掲載しています。
[出典] 『新・人工呼吸ケアのすべてがわかる本』 (編集)道又元裕/2016年1月刊行/ 照林社