ネフロン・糸球体|尿の生成と排泄

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

高熱|体温とその調節

 

今回は、ネフロンについて解説します。

 

内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

〈目次〉

 

Summary

  • 1. 腎臓の機能単位がネフロンで、片方の腎臓に約100万個ある。
  • 2. ネフロンは腎小体と尿細管からなる。
  • 3. 腎小体は、糸球体とボウマン嚢からなる。
  • 4. 尿細管は、近位尿細管、ヘンレ・ループおよび遠位尿細管からなる。
  • 5. 慢性腎不全ではネフロンが徐々に壊死して数が減少する。

 

ネフロンとは

尿をつくる腎臓の機能単位をネフロン(nephron)という。ネフロンは、腎小体(renal corpuscle)と尿細管 (uriniferous tubules)を合わせたものである(図1)。

 

図1ネフロン(腎単位)

ネフロン(腎単位)

 

腎小体は、糸球体(glomerulus)とボウマン嚢(Bowman capsule)から構成される。尿細管は、近位尿細管(proximal tubule)、ヘンレ・ループ(Henle loop)および遠位尿細管(distal tubule)に大別される。

 

ネフロンのnephrはギリシャ語で腎臓を意味する。ネフロンは片方の腎臓に約100万個ある。慢性腎不全 (chronic renal failure)ではネフロンが徐々に壊死して数が減少する。右腎は左腎よりもわずかに低い位置にある。

 

糸球体の微細構造

糸球体は、腎臓の毛細血管で直径200μmほどの糸玉状をしているのでこの名がある。

 

糸球体の微細構造は、血管内皮細胞(capillary endothelial cell)とその基底膜(basement membrane)、上皮細胞(epithelial cells)およびメサンギウム細胞(mesangium cells)からなる。

 

糸球体の上皮細胞には小孔があり、血圧が血管外に水溶液を押し出す力でこの小孔を通って血漿を濾過する。糸球体の上皮細胞を足細胞(podocyte)という(図2)。

 

図2糸球体濾過膜の構造

糸球体濾過膜の構造

(後藤昌義編著:概説生理学―植物的機能編.改訂第2版、南江堂、1987より改変)

 

門脈系とは

糸球体に入る細動脈を輸入細動脈(afferent arteriole)、糸球体を出る細動脈を輸出細動脈(efferent arteriole)という。一般に毛細血管の前後は細動脈と細静脈であるが、糸球体のように毛細血管の前後がともに動脈(あるいは静脈)である血管系を門脈系(portal system)という。

 

肝臓の門脈(portal vein)が代表的なものであるが、門脈系としてその他に下垂体門脈系(hypophyseal portal system)がある。肝臓および下垂体の門脈系は毛細血管の前後が細静脈である。

 

サイズ・バリア 〔 size barrier 〕 とチャージ・バリア 〔 charge barrier 〕

足細胞の小孔は、分子量約70,000以上の分子(タンパク質)は通さない性質がある。これをサイズ・バリア(size barrier)という。

 

また、足細胞の表面は強いマイナス電荷をもつ糖タンパク質によって覆われており、たとえ分子量が70,000以下でもマイナス電荷をもつ分子やイオンは通さない性質がある。これをチャージ・バリア(charge barrier)という。

 

タンパク質は、COOH基の解離でマイナス電荷をもつので、チャージ・バリアからも通りにくい。

 

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血漿タンパク質のなかで最も多く含まれるのがアルブミン(albumin)である(3.7~5.0g/dL)。アルブミンは、また血漿タンパク質のなかで分子が最も小さい(分子量67,000)。そのため、アルブミンが糸球体を通過して尿中に出ることがある。タンパク尿(proteinuria)として検出されるタンパク質の大部分はアルブミンである。タンパク尿に起因する血漿タンパク質の減少をネフローゼ症候群(nephrotic syndrome)という。アルブミンの低下は、浮腫(edema)を起こす。

 

尿試験紙で検出されるアルブミンは300mg/(1日の全尿)以上で、大量アルブミン尿とよばれる。それ以下の微量アルブミン尿は尿試験紙検査では異常なしになるが、糖尿病腎症の早期発見として注目されている。ただ、1日の全尿を採取するのは容易ではないので、1回採取した随時尿中のアルブミン/クレアチニンの濃度比(アルブミン指数)が20μg/mg以上であれば、微量アルブミン尿と判断することができる。

 

※編集部注※

当記事は、2016年11月27日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

腎臓の血流の特徴|尿の生成と排泄

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版

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