平均皮膚温と平均体温|体温とその調節

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

発汗|体温とその調節

 

今回は、平均皮膚温と平均体温について解説します。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

〈目次〉

 

Summary

  • 心温は外界温の影響を受けにくく、ほぼ一定であるが、サーカディアン・リズムがある。
  • 核心温は、直腸温、舌下温(口腔温)、腋窩温、鼓膜温などとして測定される。
  • 平均皮膚温は全身の皮膚をいくつかの部分に分けて、その部分の面積が全表面積に占める割合を係数として重み付けした平均値として求める。
  • 平均体温は、0.3平均皮膚温 + 0.7核心温で求める。

 

核心温と外層温

体温は、外界温の影響を受けにくく、ほぼ一定している核心温(core temperature)と、外界温の影響を受けて変動しやすい外層温(shell temperature)がある。核心温は深部体温(deep body temperature)とよばれることもある。

 

核心温の測定では、直腸温(rectal temperature)、舌下温(口腔温)(sublingual temperature)、腋窩温(axillary temperature)などがよく用いられる。食道温(esophageal temperature)も手術中などで食道温測定プローブを挿入できるときは用いられる。

 

近年、鼓膜からの輻射温を測定する赤外線体温計(infrared ear thermometer)が普及して、家庭でもよく用いられている。耳式体温計が鼓膜温(tympanic temperature)を測定しているかどうか厳密な保証はない(入来正躬:体温生理学テキスト-わかりやすい体温のおはなし.文光堂、2003)が、1秒足らずで測定できるという利点がある。

 

鼓膜温は温(brain temperature)を直接的に反映するので、核心温として最も適切といえる。

 

皮膚温は測定部位によって異なるので、全身の皮膚をいくつかの部分に分けて、その部分の面積が全表面積に占める割合を係数として重み付けした平均値として表される。分割する数が多ければ多いほど平均皮膚温としての精度は上がるが、測定が煩雑になる。

 

実際によく用いられる平均皮膚温の計算法は4分割するRamanathan法である。この方法では胸部、上腕部、大腿部およびふくらはぎ部の4点の皮膚温を測定して図1に示した式から平均皮膚温を計算する。

 

図1平均皮膚温および平均体温

平均皮膚温および平均体温

 

サーカディアン・リズムによる核心温の差

核心温は環境温の影響によってはほとんど変化しないが、明け方に低く、夕方に高いというサーカディアン・リズム〔circadian rhythm〕(概日リズム)がある。

 

体温に限らず睡眠、内分泌、自律神経活動などにもサーカディアン・リズムがある。circaは「約」、dianは「日」の意味でサーカディアン・リズムは、約1日(約25時間)の周期で繰り返す生理的または行動機能の日内変動をいう。

 

時計やテレビ、ラジオなど、時間が分かる機器がなく、かつ太陽光などの影響も受けない環境下で自由に睡眠、飲食などをさせると、睡眠、内分泌、自律神経活動などの活動は約25時間周期になることが知られている。

 

測定部位による核心温の差

腋窩温は直腸温に対して0.8~0.9℃低い。舌下温は腋窩温より約0.2℃前後高い。このように測定部位によって温度差があるが、絶対値のわずかな差よりも体温の変化の程度が重要なので、サーカディアン・リズムを考慮して、同じ部位で毎日同じ時刻に測定することが重要である。

 

NursingEye体温の測定法

直腸温は、肛門から10cm以上奥までプローブを挿入して測定する。腋窩温は、腋窩を10分間以上密閉して測定する。舌下温は、口をとじ、5分間以上経ってから読みとる。

 

近年普及した赤外線式鼓膜温計は、耳栓のようなプローブを耳介から外耳道の入り口に入れて鼓膜からの輻射温(赤外線)を測定する。約1秒間で測定できるが外耳道の構造に個人差があるので耳朶を軽く引っ張るようにして測定するとよい。通常3回測定して最高値を採用する。

 

額に光を当てて体温を測定する非接触型体温計もある。

 

[次回]

発熱物質|体温とその調節

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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