赤血球の働き(1)|ヘモグロビンの働き
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、赤血球の働きについての解説の1回目です。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
〈目次〉
赤血球
赤血球は、直径7~8μmの中央がへこんだ円盤状の細胞で核がない(図1)。
中央のくぼみにより表面積が大きくなり酸素のやり取りに好都合であるとともに、変形性が高く赤血球よりも径の小さい血管も通過できる。狭い血管を通ることで毛細血管での循環を高める働きもある。
末梢血液中の赤血球数は、成人男性の場合約500万/μL、成人女性の場合で約450万/μLである。
組織の酸素分圧が低下すると、腎でエリスロポエチン(赤血球造成刺激因子)が産生・放出され、骨髄の幹細胞から赤芽球の分泌を促す。赤芽球が成熟すると核がとれて赤血球となり、末梢血に出ていく。赤血球はミトコンドリアをもたず、活動エネルギーは解糖系から得ている。
赤血球は核をもたないため分裂できず、寿命が終ると、脾臓や肝臓で破壊される(1日に2000億個の赤血球が産生され、同数の赤血球が破壊される)。赤血球の寿命は約120日である。このため、常に新しい赤血球を補充しなければならず、骨髄では休みなく造血幹細胞の分裂が繰り返される。
脱核直後の赤血球を網状赤血球という。網状赤血球は通常2日後に、普通の赤血球になる。したがって、網状赤血球の割合が多ければ造血が盛んであることになり、少なければ赤血球がつくられていないことになる。
網状赤血球の赤血球に占める割合は%、あるいは‰(パーミル、1000分率)で表す。一般に男性で5~20‰、女性で5~10‰である。
ヘモグロビン〔hemoglobin〕
赤血球の成分の大半は、水とヘモグロビンである。酸素運搬は、ほとんどがヘモグロビンの働きによる。ヘモグロビンは、鉄を含むヘム heme (赤い色素)とグロビン globin というタンパク質からなる。ヘモグロビン1分子中に、ヘムが4個入っている(図2の構造式)。
赤血球が壊れて血球外に出たヘモグロビン hemoglobin (Hb)は、ヘムとグロビンに分解され、ヘムはさらにビリルビンと鉄に分かれる。鉄は次のHb合成に再利用され、グロビンもアミノ酸に分解されて再利用されるが、ビリルビンは肝臓から胆管を通って小腸に出される。
その一部は小腸から吸収され血液中に入って肝臓に戻り(ビリルビンの腸肝循環)、また腎臓に入ってウロビリノーゲンとなり尿中に排泄される。小腸で吸収されなかった大半のビリルビンは、酸化されステルコビリンとなり、糞便とともに排泄される(図3)。
糞便の色はステルコビリンの色である。血漿中のビリルビン濃度が高くなると皮膚が黄色にみえることがある。これを黄疸という。
ヘモグロビンの働き
酸素運搬
Hbは酸素(O2)と結合する性質をもっている。1gのHbは約1.34mLのO2と結合できる。HbはO2と結合すると鮮赤色になり、O2と結合していない場合、暗赤色になる。O2と結合したヘモグロビンをオキシヘモグロビン oxy-Hb、 O2と結合していないヘモグロビンをデオキシヘモグロビン deoxy-Hb または、還元ヘモグロビンという(deoxy-Hb + O2⇄ oxy-Hb)。
ヘモグロビンがO2と結合して oxy-Hb になる割合は、酸素(O2)分圧(酸素濃度)が高いほど多く、希薄なほど少ない。肺胞内はO2分圧が高いので、血液が肺を流れると赤血球内のHbがO2を取り込み、動脈血となる。動脈血は95%が oxy-Hb である。
各組織のO2分圧は低いので、O2を放ち静脈血となる(組織にO2を供給した後の血液)。静脈血の25%は deoxy-Hb なので、oxy-Hb は75%となる。肺を通過した動脈血が鮮赤色で、静脈血が暗赤色なのはこの理由による。
CO2運搬
組織代謝の結果生じた二酸化炭素(CO2)の一部はHbのタンパク成分(グロビン)に結合し、肺まで運搬され大気中に放出される。しかし、CO2の多くは血液中の水と反応して重炭酸イオン(HCO3-)となり血漿中に溶解する。
CO2分圧もO2分圧と同様、肺でのガス交換と肺胞換気によって影響されている。肺胞換気が低下するとCO2分圧は増加する。CO2分圧の基準値は約40mmHgである(O2分圧の基準値は約95mmHg)。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版