血球の産生(造血)|血液と生体防御
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、血球の産生(造血)について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師
Summary
- 1. 血球は、骨髄中にある未分化の幹細胞からつくられる。
- 2. 造血幹細胞は臍帯血中に骨髄と同じくらい豊富に存在する。末梢血中にも少量であるが含まれている。
- 3. エリスロポエチン(赤血球造成刺激因子)は、動脈血の酸素分圧が低下すると腎臓で産生・分泌され、赤血球の産生を促進する。
血球の産生(造血)
全ての血球は、骨髄にある未分化の造血幹細胞(hematopoietic stem cell:HSC)からつくられる。
図1に示すように、同一の造血幹細胞から赤血球系、白血球系、血小板系の各血球の幼若型が分裂・分化し、成熟型の血球となり、血液中に出ていく。
図1血球の系統と発達
赤血球、白血球、血小板は、すべて骨髄中にある未分化の幹細胞(造血幹細胞)から幼若型に分裂・分化し、成熟型の血球となり、血液中へ出ていく。
*ファブリキウス嚢は鳥類にみられ、哺乳類では骨髄がこれに相当する。
それぞれの血球がつくられる際に関与するホルモンが異なる。赤血球には、腎臓で産生されるエリスロポエチン(erythropoietin)が関与するが、白血球が産生される際には顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が関与する。
造血はさまざまな骨髄で行われているが、長管骨よりも扁平骨(胸骨や骨盤の腸骨など)のほうが盛んである。造血の盛んな骨髄は赤色(赤色骨髄)に見えるが、造血が行われていない骨髄は黄色(黄色骨髄)に見える。
これは、骨髄が脂肪に置き換わっているからで、加齢とともに赤色骨髄の割合いは減少していく。また、病的状態(再生不良性貧血など)では、赤色骨髄が黄色骨髄に置き換わることがある。造血は成人の場合、通常、骨髄だけで行われているが、胎児では脾臓や肝臓でも行われている。
通常、造血幹細胞は骨髄に存在するが、G-CSF投与によって末梢血に動員されてくる。また、臍帯血にも造血幹細胞が含まれている。これらは、末梢血幹細胞移植や臍帯血移植として臨床応用されている。
※編集部注※
当記事は、2016年6月9日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版