赤血球の働き(2)|ヘモグロビン量、ヘモグロビンの酸素飽和度、ヘマトクリット値

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

赤血球の働き(1)

 

今回は、赤血球の働きについての解説の2回目です。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師

 

Summary

  • 1. Hbのうち酸素と結合している割合を%値で表したのがHb酸素飽和度である。動脈血の酸素飽和度は95%である。一方、肺動脈を流れる静脈血の酸素飽和度は75%である。
  • 2. Hb量は血液1dL中に含まれるHb量をgで表したもので、成人男性では約16g/dL、成人女性で14g/dL である。
  • 3. 1gのHbは約1.34mLの酸素を結合できる。
  • 4. ヘマトクリット値は、血液中に占める血球容積の割合を示す値である。
  • 5. 赤血球数、Hb量、ヘマトクリット値は血液疾患の診断に使われる。

 

〈目次〉

 

ヘモグロビンの働き

酸素運搬

Hbは酸素(O2)と結合する。1gのHbは約1.34 mLのO2と結合できる。HbはO2と結合すると鮮赤色になり、O2と結合していない場合、暗赤色になる。

 

O2と結合したヘモグロビンをオキシヘモグロビン(oxy-Hb)、O2と結合していないヘモグロビンをデオキシヘモグロビン(deoxy-Hb)または、還元ヘモグロビンという( deoxy-Hb + O2 ⇄ oxy-Hb )。

 

ヘモグロビンが O2と結合してoxy-Hbになる割合は、酸素(O2)分圧(酸素濃度)が高いほど多く、希薄なほど少ない。肺胞内はO2分圧が高いので、血液が肺を流れると赤血球内のHbがO2を取り込み、動脈血となる。動脈血は95%がoxy-Hbである。各組織のO2分圧は低いので、O2を放ち静脈血となる(組織にO2を供給した後の血液)。

 

静脈血の25%はdeoxy-Hbなので、oxy-Hbは75%となる。肺を通過した動脈血が鮮赤色で、静脈血が暗赤色なのはこの理由による。

 

CO2運搬

組織代謝の結果生じた二酸化炭素(CO2)の一部はHbのタンパク成分(グロビン)に結合し、肺まで運搬され大気中に放出される。

 

しかし、CO2の多くは血液中の水と反応して重炭酸イオン(HCO3-)となり血漿中に溶解する。CO2分圧も O2分圧と同様、肺でのガス交換と肺胞換気によって影響されている。肺胞換気が低下すると CO2分圧は増加する。CO2分圧の基準値は約40mmHg である(O2分圧の基準値は約95mmHg)。

 

ヘモグロビン量(ヘモグロビン濃度、血色素量:Hb量)

血液100mL(1dL)中に含まれるHbの量をgで表す。成人男性の基準値は約14~18g/dL、成人女性で12~16g/dLである。1gのHbは約1.34mLの酸素と結合できるので、成人男性の場合、血液100mL あたり最大24.12 mLの酸素を含有することができる。

 

ヘモグロビンの酸素飽和度

Hbのうちオキシヘモグロビンの割合を%値で表したのがHbの酸素飽和度である。動脈血ではどの部位でも酸素飽和度に差はなく、その基準値は95%以上である。手術中(麻酔中)も酸素飽和度が95%を切らないように管理されている。

 

一方、全身を循環した血液が右心房に戻って肺動脈から肺に入る前の静脈血(体循環と冠循環で酸素が消費された後の血液:混合静脈血)の酸素飽和度は75%である。

 

ヘマトクリット値(図1

ヘマトクリット(Ht)値は、血液中に占める血球容積の割合を示す値である。血液が凝固しないように注意して細いガラス管に吸い上げ、一端を閉じて遠心分離する。すると重い血球は下層に、液体成分(血漿)は上層に分かれる。

 

基準値は約45%である。これは血液のうち45%が血球、55%が血漿であることを意味する。血球の中では赤血球が大部分を占めるので、ヘマトクリット値の異常は赤血球数の異常とみなすことができる。

 

赤血球数、Hb量、Ht値は、血液疾患を診断するうえで重要な指標となる。赤血球数・Hb・Htが上昇する疾患として、真性赤血球増加症がある。また、赤血球数・Hb・Htが減少する疾患として、貧血がある。これらの数値は、脱水による血液濃縮でも増加する。

 

図1ヘマトクリット値

ヘマトクリット値

 

A:血液が凝固しないように血液凝固抑制剤を加えた血液。
B:Aを遠心分離した後、血液は血漿(上層)と血球(下層)に分かれる。

 

※編集部注※

当記事は、2016年6月16日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

貧血

 

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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