脊髄の機能(1)|神経系の機能
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、脊髄の機能についての解説の1回目です。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
〈目次〉
脊髄〔 spinal cord 〕
脊髄には、脳への神経線維束(上行性)、脳からの神経線維束(下行性)、神経反射の中枢があり、多くの脊髄神経が出入りするところである。脊髄の2つの重要な機能は、①脳からあるいは脳への情報を伝えることと、②脊髄反射、である。
大脳皮質の運動野から出る運動指令の下行路には、運動の指令を随意的に骨格筋に伝える錐体路と、無意識的に筋の緊張や微妙な筋の動きの調整にかかわる錐体外路の2つがあり、互いに協力しながら骨格筋の運動を調整している。
錐体路〔pyramidal tract〕
大脳皮質の運動野から出て、運動指令を随意的に骨格筋まで伝える下行性神経路が錐体路(図1)である。
中枢から骨格筋まで1回ニューロンを交代する。運動野から出る神経線維は内包、中脳、橋、延髄を通り、大部分は延髄の錐体で交叉して脊髄側索を下行し、前角神経細胞にシナプスを介して結合する。さらに遠心性の運動神経によって骨格筋に指令が伝えられる。
錐体外路〔 extrapyramidal tract 〕
錐体路以外の運動指令を伝える神経路を錐体外路(図2)とよぶ。
錐体路による骨格筋の随意的運動を円滑に行うために重要な役割を果たしている。錐体外路系の働きには、大脳皮質にある錐体外路中枢や大脳基底核、視床、脳幹の黒質、赤核、小脳などが複雑に関与しており、さまざまな中枢と核が連絡を取りながら、筋の緊張や筋群の協調運動を反射的、無意識的に行っている。豆を箸でつまむなど微妙な動きを上手にできるのは、錐体外路系の機能による。
NursingEye
脳卒中や交通事故などにより、右側の大脳皮質運動野が障害されると左半身麻痺が生ずるのは、運動野から出る神経線維の大部分は延髄の錐体で交叉しているためである。
錐体外路系の障害が起こると、豆をつまむなど微妙な動きができなくなるだけでなく、手足の震えや歩行障害などパーキンソン様症候群(パーキンソン病類似の病像を示す一群の疾患をこうよぶ)となる。パーキンソン様症候群は、黒質-線条体のドーパミン作動性神経路の変性疾患である。
感覚に関する神経路
皮膚や筋などの感覚(知覚)情報は、後根から入り後角神経細胞に伝えられ、上行性知覚路によって脳に伝えられる(図3)。
(増田敦子:新訂版 解剖生理をおもしろく学ぶ.p.187、サイオ出版、2015)
[次回]
⇒〔ワンポイント生理学一覧〕を見る
本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版