脳波|神経系の機能
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、脳波について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
〈目次〉
脳波〔 brain wave 〕
心臓(心電図)や骨格筋(筋電図)と同様に、脳の電気活動も記録することができる。頭皮上や脳の表面に電極を当てて、脳の電気活動を記録したものを脳波または脳電図(EEG) electroencephalogramという。
脳波は脳の活動状態を示すもので、意識水準が高いときは脳波の周波数は高く振幅は小さい(低振幅速波)。一方、うとうとしたり睡眠が深くなるなど意識水準が低下すると、周波数は低く、振幅は大きくなる(高振幅徐波)。
正常な脳波のパターンを図1に示す。脳腫瘍やてんかんなど、異常波形を示す脳の疾患の診断や脳死判定に用いられる。
脳波の種類(図1)
α波
覚醒安静時(目を閉じて安静にしている状態)にみられる波で、周波数8~13Hz、振幅30~60μV程度の比較的規則正しい波を示す。
β波
注意力を集中して、精神活動を行っているときに現れる波で、周波数14~30Hz、振幅30μV以下の不規則な波を示す。β波を多く含む脳波を覚醒型の波形という。
θ波
まどろんでいるような浅い睡眠中にみられる波形で、周波数は4~7Hz、振幅は10~50μV程度の波形を示す。
δ波
深い睡眠中や麻酔時に現れる波で、周波数は0.5~4Hz、振幅は20~200μV程度の波形を示す。幼児に著明にみられる。
レム睡眠〔 REM sleep 〕とノンレム睡眠〔 non REM sleep 〕
睡眠中に脳波を記録すると、2種類の睡眠(レム睡眠とノンレム睡眠)が観察されることがわかってきた。深い眠りについているときは緩やかなδ波(徐波)が多くなる。
この状態を徐波睡眠 slow wave sleepまたはノンレム睡眠 non rapid eye movement(non REM)とよび、この時期は副交感神経優位状態になっており、心拍数・血圧・体温・呼吸活動の低下、瞳孔の縮小が観察される。すなわち脳は休んでいる状態にある。
このノンレム睡眠がしばらく続くと、脳波は急に入眠期と同じパターンになり、浅い睡眠中にみられる低振幅速波(θ波)が現れる。
この時期には、身体は明らかに眠っているのに心拍数増加、呼吸数増加、陰茎勃起がみられる。骨格筋の緊張は低下する。
この時期には、また速い眼球運動 rapid eye movement(REM)が観察されることからレム(REM)睡眠と名付けられている。また、この睡眠を逆説睡眠 paradoxical sleep、賦活睡眠 activated sleepともいう。レム睡眠中は交感神経と副交感神経の調節が乱れていることを示している。夢を見るのはこの時期である。
しかし、睡眠は妨げられておらず、感覚刺激や網様体刺激による覚醒の閾値はむしろ上昇している。そのため最も目覚めにくい時期である。正常な睡眠はノンレム睡眠からはじまるが、ノンレム睡眠とレム睡眠が90~120分周期で明け方まで交互に繰り返す。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版