脳波|神経系の機能
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、脳波について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師
Summary
- 1. 脳の表面に電極を当てて脳の電気活動を記録したものを脳波(脳電図)という。
- 2. 意識水準が高いときは、周波数が高く振幅の小さい脳波が、睡眠が深くなると、周波数が低く振幅の大きい脳波が現れる。主なものにα波(覚醒安静時)、β波(活発な精神活動時)、θ波(まどろみや浅い睡眠)、δ波(深い睡眠)がある。
- 3. 睡眠中には2種類の睡眠(レム睡眠とノンレム睡眠)が観察される。ノンレム睡眠中は副交感神経優位で、脳が休んでいる状態である、レム睡眠中は交感神経と副交感神経の調節が乱れており、夢を見るのはこの時期である。速い眼球運動が観察される。
〈目次〉
脳波〔 brain wave 〕
心臓(心電図)や骨格筋(筋電図)と同様に、脳の電気活動も記録することができる。頭皮上に電極を当てて、脳の電気活動を記録したものを脳波(EEG、electroencephalogram)という。
脳波は脳の活動状態を示すもので、意識水準が高いときは脳波の周波数は高く振幅は小さい(低振幅速波)。一方、うとうとしたり睡眠が深くなるなど意識水準が低下すると、周波数は低く、振幅は大きくなる(高振幅徐波)。
てんかんの診断、意識障害の評価、睡眠異常の診断、脳死判定、特殊な波形からの疾患推定など用いられる。安静・閉眼・覚醒状態での検査が基本であり、計21個の電極を用いることが多い。
脳波の種類(図1)
図1ヒトの脳波
β波
注意力を集中して、精神活動を行っているときに現れる波で、周波数14~30Hz、振幅30μV 以下の不規則な波を示す。
α波
覚醒安静時(目を閉じて安静にしている状態)にみられる波で、周波数8~13Hz、振幅30~60μV 程度の比較的規則正しい波を示す。速波と徐波は、それぞれα波よりも周波数が高いか低いかを示す。
θ波
まどろむような浅い睡眠中にみられる波形で、周波数は4~7Hz、振幅は10~50μV程度の波形を示す。
δ波
深い睡眠中や麻酔時に現れる波で、周波数は0.5~4Hz、振幅は20~200μV程度の波形を示す。幼児に著明にみられる。
レム睡眠〔 REM sleep 〕とノンレム睡眠〔 non REM sleep 〕
睡眠中に脳波を記録すると、2種類の睡眠(レム睡眠とノンレム睡眠)が観察される。深い眠りについているときは緩やかなδ波(徐波)が多くなる。
この状態を徐波睡眠(slow wavesleep)またはノンレム睡眠(non rapid eye movement、non REM)とよび、この時期は副交感神経優位状態になっており、心拍数・血圧・体温・呼吸活動の低下、瞳孔の縮小が観察される。すなわち脳は休んでいる状態にある。
このノンレム睡眠がしばらく続くと、脳波は急に入眠期と同じパターンになり、浅い睡眠中にみられる低振幅速波(θ波)が現れる。
この時期には、身体は明らかに眠っているのに心拍数増加、呼吸数増加、陰茎勃起がみられる。骨格筋の緊張は低下する。
この時期には、また速い眼球運動(rapid eye movement、REM)が観察されることからレム(REM)睡眠と名付けられている。また、この睡眠を逆説睡眠(paradoxicalsleep)、賦活睡眠(activated sleep)ともいう。レム睡眠中は交感神経と副交感神経の調節が乱れていることを示している。夢を見るのはこの時期である。
しかし、睡眠は妨げられておらず、感覚刺激や網様体刺激による覚醒の閾値はむしろ上昇している。正常な睡眠はノンレム睡眠からはじまるが、ノンレム睡眠とレム睡眠が90~120分周期で明け方まで交互に繰り返す。
※編集部注※
当記事は、2016年5月12日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『図解ワンポイント 生理学 第2版』 (著者)片野由美、内田勝雄/2024年7月刊行/ サイオ出版