脳室と脳脊髄液|神経系の機能

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

脳幹の機能

 

今回は、脳室と脳脊髄液について解説します。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
松本 裕
東海大学医学部看護学科講師

 

Summary

  • 1. 脳と脊髄には腔所がある。脳の腔所(脳室)と脊髄の腔所(中心管)はつながっており、そのなかを脳脊髄液が満たしている。
  • 2. 脳脊髄液は脈絡叢で産生される。クモ膜下腔に出た髄液は、クモ膜顆粒を通って静脈内に流れ込む。
  • 3. 脳・脊髄は硬膜、クモ膜、軟膜の3重の髄膜によって包まれており、脳室内を満たす髄液は液体のクッションの役割を果たしている。

 

脊髄は、胎生の早い時期に外胚葉から分化した神経管から発達したものである。神経管の内腔は中枢神経系が完成した後も腔所として残り、脳では脳室(ventricle)、脊髄では中心管となり、その内腔を脳脊髄液(cerebrospinal fluid)が満たしている。

 

左右の大脳半球にある腔所を側脳室(lateral ventricle)、間脳にある腔所を第三脳室(thirdventricle)、中脳にある腔所を中脳水道(cerebral aqueduct)、延髄の背面にある菱形状の腔所を第四脳室(fourth ventricle)とよび、すべての部分はつながっている。側脳室と第三脳室は室間孔(Monro 孔)でつながり、第三脳室と第四脳室は中脳水道でつながっている。また第四脳室は中心管につながっている(図1図2)。

 

図1脳および脊髄と髄液の流れ

脳および脊髄と髄液の流れ

 

図2脳室側面と脳室拡大図

脳室側面と脳室拡大図

 

脳脊髄液(髄液)は、脳室内にある特殊な組織である脈絡叢(みゃくらくそう、choroid plexus)で主に産生され、脳脊髄全体を満たしている。

 

脳脊髄液は、第四脳室の2つの外側口および正中口から脳の外に流れ出てクモ膜下腔を満たす。クモ膜下腔に出た髄液は、クモ膜顆粒を通って静脈内に流れ込む。

 

脳・脊髄は、硬膜クモ膜軟膜という3重の髄膜で包まれ、脳室内を満たす髄液は液体のクッションの役割を果たしている。脳室やクモ膜下腔を満たす脳脊髄液の総量は500mLであり、浮力により脳が自重でつぶれることを防いでいる(脳の重量は約1.3kgだが、浮力によって約50gへと大幅に軽くなる)。

 

NursingEye

成人する前に脳脊髄液の流通が妨げられると、脳室内に髄液が大量にたまる。すると脳室内の圧力が高くなり、脳室腔は異常に拡大する。これを水頭症という。水頭症の原因は、①脈絡叢での髄液産生亢進(側脳室脈絡叢乳頭腫)、②髄液通過障害(脳室周囲の腫瘍など)、③クモ膜顆粒での髄液吸収障害(脳静脈洞血栓症など)に分類できる。

 

※編集部注※

当記事は、2016年5月8日に公開した記事を、第2版の内容に合わせ、更新したものです。

 

[次回]

脳波

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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

新訂版 図解ワンポイント 生理学

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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