脊髄の機能(2)|神経系の機能

看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。

 

[前回の内容]

脊髄の機能(1)

 

今回は、脊髄の機能についての解説の2回目です。

 

片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授

 

Summary

  • 反射とは、刺激に対して無意識的に(大皮質を介さない)反応することである。
  • 脊髄反射は、末梢からの刺激情報が求心路(知覚神経)によって脊髄の反射中枢に達すると、反射的に遠心路(運動神経)を介して支配筋肉にその情報を伝え収縮させる。
  • 刺激情報伝導路を反射弓という。膝蓋腱反射は最も単純な反射弓の例である。
  • 反射には、体性神経系の反射と自律神経系の反射がある。

 

脊髄反射〔 spinal reflex 〕

脊髄のもう1つの重要な機能は反射である。末梢からの刺激情報が求心路(知覚神経)によって脊髄の反射中枢に達する。

 

すると意志とは関係なく無意識に(大脳皮質を介することなく)、反射的にただちに遠心路(運動神経)を介してその刺激情報を末梢に伝え、支配筋を収縮させたり、腺分泌を行う。これを脊髄反射という。この刺激情報伝導経路を反射弓 reflex arc という。

 

膝蓋腱(しつがいけん)反射 patellar reflex (図1)は、最も単純な反射弓の例であり、腰をかけて下腿を垂らせた姿勢または仰臥位で膝を曲げて組んだ姿勢で、膝蓋腱をハンマーで打つ。すると大腿四頭筋が収縮して下腿が跳ね上がる。この反射を膝蓋腱反射という。

 

図1膝蓋腱反射

膝蓋腱反射

 

反射には、体性神経系の反射 somatic reflex と自律神経系の反射 autonomic reflex とがある。体性神経反射には、熱いものに手を触れるととっさに手を引っ込めるなどの骨格筋の反射がある。これは反射的に手を引っ込めるもので、その後、大脳皮質が熱さを感じる。膝蓋腱反射 patellar reflex も脊髄反射の例である。脊髄反射には、脳が関与する場合もある。

 

例えば多くの異なった刺激情報がやってきたとき、その反射反応には的確さを要する場合がある。このような場合、情報を判断するために脳が関与する。

 

自律神経反射(または内臓神経反射ともよばれる)は、唾液を分泌する反射(唾液分泌反射)や瞳孔の大きさを変化させる反射(瞳孔反射)、くしゃみなどがある。血圧、発汗、消化、排泄なども自律神経系反射で調節されている。

 

NursingEye

反射の検査は、神経系の状態を把握するうえで重要である。腱反射の減衰は、末梢神経炎、反射中枢部の脊髄炎など、反射弓のどこか、または上位中枢に障害があるためと考えられる。

 

一方、腱反射の亢進は、反射中枢における興奮性上昇、または脳内出血など反射中枢に障害が生じたため、反射中枢への抑制が減少または促進的影響が増大したためと考えられる。

 

※編集部註※

当記事は公開時点で、図1の膝蓋腱反射で一部誤りがございました。

筋紡錘があるのは膝蓋腱ではなく、大腿四頭筋の誤りです。

2024年10月30日に、正しい情報に修正しました。修正の上、お詫び申し上げます。

 

[次回]

末梢神経系

 

⇒〔ワンポイント生理学一覧〕を見る

 


本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版

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