末梢神経系|神経系の機能
看護師のための生理学の解説書『図解ワンポイント生理学』より。
[前回の内容]
今回は、末梢神経系について解説します。
片野由美
山形大学医学部名誉教授
内田勝雄
山形県立保健医療大学名誉教授
Summary
〈目次〉
はじめに
全身にくまなく張り巡らされている神経は、①皮膚や身体のさまざまな部位から情報を脳に送る役割、②送られてきた情報を分析、整理、判断し、その情報に応じて適切な決定を下す司令塔の役割、③その決定を末梢に伝える役割を担っている。②の役割を担っているのが中枢神経系で、①と③の役割を担っているのが末梢神経系である。
末梢神経系〔 peripheral nervous system〕
中枢神経(脳と脊髄にある神経)と各器官をつなぐ神経系の束を末梢神経系という。末梢神経系は、自律神経系と体性神経系に大別される。
自律神経系は、交感神経と副交感神経の2種類の神経からなり、それぞれが各器官に分布し、拮抗的に働きながら無意識的に、反射的に内部環境を維持している。
体性神経系 somatic nervous system は、解剖学的(形態学的)には、脳に出入りする脳神経と脊髄に出入りする脊髄神経の2つに分類されている。脳神経、脊髄神経は、皮膚など末梢からの情報を中枢に伝える知覚神経 sensory nerve (求心性神経)と、この情報に対応する中枢からの指令を末梢(骨格筋)に伝える運動神経 motor nerve (遠心性神経)から成り立っている。この他に両方の神経が混在する混合神経がある。
体性神経系(脳脊髄神経系)
脳神経〔 cranial nerves 〕
脳からは12対の脳神経が出ていて、主に頭部、顔面、頚部を支配している。12対の神経は、表1のような役割を担っている。胸腹部までのびて内臓を支配しているのは1対の迷走神経 vagus nerve である。
脊髄神経〔 spinal nerves 〕
脊髄神経は、脊髄の前根から出る運動神経と後根に入る知覚神経が椎間孔から出たところで合わさり、混合神経になる。脊髄神経は31対ある(表2)。
運動神経 moter nerve は、骨格筋に分布している。運動神経の興奮が神経終末に達すると、神経終末から伝達物質であるアセチルコリンが放出され、これが骨格筋のニコチン受容体(NM受容体)に結合して骨格筋の収縮を起こす(骨格筋参照)。
薬理学では、薬物の作用機序を説明するうえで、体性神経系を運動神経と知覚神経に分類している。
NursingEye
運動神経を介する骨格筋の収縮を抑制する薬物を筋弛緩薬といい、臨床上、全身麻酔薬の前投薬として、また内視鏡を使うとき挿入を容易にする等の目的で使用される。
痛覚刺激が知覚神経を介して中枢に伝わるのを、選択的に抑制する薬物を局所麻酔薬という。小手術から比較的大手術を行う際、意識消失を伴うことなく無痛状態にすることを目的に使用される。
[次回]
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本記事は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。
[出典] 『新訂版 図解ワンポイント 生理学』 (著者)片野由美、内田勝雄/2015年5月刊行/ サイオ出版